(イラスト/もとき理川)
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
(イラスト/もとき理川) 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

「手術ができない」と言われて納得できず、「できる病院を探したい」という人は多いだろう。名古屋セントラル病院院長の中尾昭公医師のもとには、そうした患者が連日、セカンドオピニオンにやってくる。

 膵臓は周囲をさまざまな臓器に囲まれている。そこに出入りする主要な血管にがんが広がりやすい。ステージIIIはガイドラインにより、「切除可能境界」と「切除不能」に分類されている。前者はがんが血管へ広がっているが、通常の手術でがんを取り切れる可能性が高い。

■切除不能の約3割に手術ができる可能性

 問題は後者で、遠隔転移はないが、血管にがんが大きく広がり、その名の通り、「手術不可能」とされることがほとんどだ。

 「手術で合併症を起こす確率も高く、病院の方針として、『やらない』と決めているところもあります」(中尾医師)

 中尾医師は「切除不能」でも、「できる」と判断すれば手術を積極的におこなう。実は中尾医師は膵がんのさまざまな手術法を開発し、手術の適応を広げてきたこの道の第一人者なのだ。このステージのがんを手術するために必要な「メセンテリックアプローチ」(膵臓に触らずに安全に膵がんを切除する方法)や門脈に浸潤した膵がんにおこなう「門脈カテーテルバイパス法」などもその一つだ。

 「手術の方法は確立されていても、熟練の医師でなければ実施することができません。それができる限られた医師を探して、患者さんが全国から相談に来るわけですね」(同)

 セカンドオピニオンは医師からの紹介が多く、がん診療連携拠点病院からのものもあるという。一方、患者自身がネットなどで中尾医師を知り、問い合わせをしてくるケースも多い。なお、同院ではセカンドオピニオンを希望する場合、医師の紹介状と画像を準備できることが条件となっている。

 中尾医師の診断では「切除不能」の患者のうち、約3割は「手術ができる可能性あり」となる。

 「これらの患者にはまず、化学療法を受けてもらいます。コンバージョン手術といいますが、すぐに手術をするよりも、この方法のほうが予後がよいことがわかってきたからです」(同)

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