『二月の勝者』主人公の塾講師・黒木蔵人(画像はコミックス14巻のカバーより)
『二月の勝者』主人公の塾講師・黒木蔵人(画像はコミックス14巻のカバーより)

 大手中学受験塾を舞台にしたコミック『二月の勝者-絶対合格の教室-』(小学館)は、そのリアリティーある描写が話題となり、累計発行部数が250万部を超える大ヒットとなった。昨年10月には柳楽優弥主演でドラマ化もされ、受験生の保護者の間では「必読本」とも言われる。だがそれゆえ、漫画の内容をすべてうのみにして、必要以上に重圧を感じてしまう保護者もいる。受験生の親は『二月の勝者』をどう読むべきなのか。武蔵中など難関校に多くの合格者を輩出する中学受験塾「アントレ」代表の柏原大夢(かしはら・ひろむ)さんに、当事者だからこそ知る塾業界の“実態”を聞いた。

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――『二月の勝者』は大手中学受験塾の内実を描いた漫画として、保護者からも圧倒的な支持を受けています。ただ、あくまでエンターテインメント作品なので、脚色されている部分もあると思います。現役の中学受験塾の代表として、この漫画をどのように読みましたか。

 8~9割は本当にその通りだなと共感しながら読みました。よく取材されていますよね。受験生を持つ家族のストーリーがいくつも描かれているので、保護者だけでなく、子どもが読んでもモチベーション向上につながると思います。大人の事情はよくわからないかもしれないけど、自分とは違う環境の子も、それぞれいろんな思いを抱えながら勉強に向き合っていることを知るのは、いい刺激になるはずです。

 また、中学受験を考えていない保護者の方にも読んでほしい。地元の公立中でいいと思っている家庭は、中学受験をする子どもたちを“勉強漬けにされてかわいそう”という目で見ていることが少なくありません。でも『二月の勝者』には、いろいろな事情を抱えた家庭の子どもたちが登場します。子どもたちの気持ちもさまざまです。親に無理やり勉強させられている“かわいそうな子”ではないことが、よく理解できるはずです。中学受験をする家庭、しない家庭の「壁」が無くなるきっかけになってくれたらいいですね。

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