渋谷駅前で、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する人たち(2022年2月26日)
渋谷駅前で、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する人たち(2022年2月26日)

 ロシアのウクライナ侵攻について、日本国内で大学学長が相次いで抗議声明を出している。もっとも早かったのは広島大、東京大だった。25日のことである。

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 広島大は「人類史上初の原爆が投下された広島に開学した大学として、ここに強く抗議するとともに、1日も早い平和的解決を訴えます」と被爆地からの視点で訴えた。

 東京大は「東京大学を代表して、この事態を深く憂慮し、被害の拡大を防ぐため、対話と交渉による平和的解決が図られることを強く望みます」と、大学総意の主張であることを強調している。

 学長による抗議声明は続いた。

 26日に朝日大(岐阜県)、27日に新潟県立大、28日に北海道大、国際基督教大、福島大、龍谷大、大阪観光大などの学長が大学ウェブサイトで発信している。

 朝日大、新潟県立大、大阪観光大の学長に抗議声明を出した思いを尋ねた。

 朝日大の学長声明は力強い。

「【緊急声明】 STOP WAR
 私ども朝日大学は、「国際性と社会性に富む人間、和を重んずる心豊かな人間を育成する」という本学の建学の精神に立脚し、このたびのロシアによるウクライナへの侵攻に対して「STOP WAR」の声をここに上げる。一日も早い停戦と、隣人たるウクライナ市民の安全を心より祈る。
 シェルターでおびえる子どもたちの姿を見よ。
 学生諸君は、初年次教育「建学の精神と社会生活」を通じて私が伝えたように、決して思考停止に陥ることなく、この事態を直視し、多くのことを学び、考え、議論をし、そして共に平和を祈ろう。 2022年2月26日 朝日大学学長 大友克之」

 朝日大では教育の理念として、学生に社会性を持たせることを掲げている。1年次にさまざまな社会問題を提案しながら、自分の頭で考え、理解し、議論し、オピニオンを持つように教えている。同大学の大友学長がこう補足する。

「今回の声明はこうした大学の教育理念に基づいて、学長自らメッセージを発信すべきだと考えました。武力侵攻が目の前で始まったことにたいへんな危機感をおぼえ、日本がこれまで希求してきた平和に基づいて、訴えたかったのです。さまざまな事象が起こったとき、それについて考えるのをやめてしまう人たちがいます。残念です。近い将来、国際社会で活躍するために、決して思考停止に陥らないようにしてほしい。そんな思いを込めました」

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