俳優・脚本家の佐藤二朗さん
俳優・脚本家の佐藤二朗さん

 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、「妻の残酷名言集」の第2弾です。

【写真】やはり仏。見よ、佐藤二朗氏の笑顔を

*  *  *
 第2弾である。

 担当K氏の発案で以前書いた「妻の残酷名言(というか迷言)集」。

 好評につき第2弾。

 うそ。好評かどうかは知らない。ただ、いつも当コラム、書き終わるのに数時間は掛かるのだが、妻の残酷発言を書いた時だけ20分くらいで書き終えてしまい、溢れ出る湯水のように次から次へと残酷発言を思いついたので、第2弾を書くことにする。

 では、妻、いわゆるマーツーの残酷迷言の数々をば。

「君の顔、田んぼのあぜ道に似てるね」

 いきなりのハイブロー。田んぼのあぜ道に似た顔とは一体…。ただ、これを言ったマーツーは深く静かに真顔だった。恐らくそのとき僕、無精ヒゲを生やしていたのでしょうな。そのヒゲが、なんというか、稲と考えれば、田んぼのあぜ道というのも納得できないこともないわけないだろ馬鹿野郎。

「うわビックリしたっっ……君の目、細いね」

 ある朝、僕の顔を見て突然放った発言。マーツー、本当にビックリしていた。25年以上一緒にいて、なぜこの朝いきなり気づいたかは謎。なぜ25年以上それに気づかなかったのかはさらに謎。

「この、でくの坊!」

 王道。罵倒語の王道。これ実は、以前ドラマ「女信長」で主演の天海祐希さんが将軍役の僕に言った台詞。天海さんのカッコいい痛快な言い回しもあってか、マーツーはいたくこの台詞を気に入り、しばらくは事あるごとに僕に笑顔で言っていた。マーツー、本当に笑顔だった。

「はい 」

 僕が仕事から帰るとき、「今から帰るよ。お母さん、大好き大好き、宇宙で一番大好き」とハートマークの絵文字を5つくらい使って送ったメールの、マーツーからの返信がコレ。本当にコレだけ。もちろん絵文字などない。まあ、シラフでハートマークの絵文字を何個も駆使する中年男も大概ではあるが。それにしても頭の中お花畑の困った夫のいなし方が半端ない。一刀両断。2文字という最小カロリーで一刀両断。マーツー、ほぼ武士。

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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敬語に震え上がった妻からの伝言