西武時代の西崎幸広選手
西武時代の西崎幸広選手

 昨オフに球界を騒然とさせたのが、日本ハムの「主力退団劇」だった。

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 新庄剛志新監督、稲葉篤紀GMの新体制でチーム作りが注目される中、海外FA権を持つ西川遥輝、国内FA権を持つ大田泰示、秋吉亮と話し合った結果、来季の契約を提示せず保留手続きを行わないことが球団から発表された。西川は楽天、大田はDeNAに移籍。秋吉はNPBの他球団で移籍を模索したが叶わず、独立リーグ・日本海オセアンリーグの福井ネクサスエレファンツに移籍することが決まった。

 西川は昨季自身4度目の盗塁王を獲得したものの昨季は打撃不振に苦しみ、大田と秋吉も1軍に定着できず不本意な成績に終わった。FA権を行使しても高年俸がネックとなり、他球団への移籍が実現する可能性が低い。保有権の放棄はメジャーで「ノンテンダー」と呼ばれる。年俸の抑制を狙う球団と、移籍を視野に入れる選手の双方にメリットがあると評価する声もあるが、プロ野球OBはこう警鐘を鳴らす。

「ノンテンダーという言葉を聞くときれいな退団劇に聞こえますが、事実上の戦力外通告でしょう。高年俸の主力選手は自由契約になることで他球団に買いたたかれてしまう。今後もFA権を獲得した選手が『ノンテンダー』を理由にして自由契約となる事態が起こり得る」

 今回の日本ハムの決断は新鮮な手法に感じるが、スポーツ紙デスクは「FAを取得した選手が事実上の戦力外通告を受けたケースは過去にもあります」と指摘する。

 その代表例が日本ハムのかつてのエース・西崎幸広氏だ。1986年に愛工大からドラフト1位で入団すると、1年目から3年連続15勝以上、5年連続2ケタ勝利を挙げて2年目の88年には最多勝をマーク。端正な顔立ちで女性ファンから絶大な人気を誇り、「トレンディーエース」と呼ばれた。だが、FA権を取得した97年に3勝に終わると、球団から来季の戦力構想から外れていることを通告された。

「エースとして長年チームを支え続けた西崎氏に対し、マスコミも想定外の事態でした。最初は戦力外通告が報じられ、その後トレード要員となった。あの時の日本ハムは主力選手たちがオフに契約更改でフロントともめたり色々ありましたが、西崎氏は故障で迷惑を掛けた責任を感じてFA権を取得しても残留するつもりでした。まさかの放出劇に各球団が獲得に興味を示したのは言うまでもありません」(前出のスポーツ紙デスク)

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