北京五輪ではドーピング疑惑もあり本来の力が発揮できなかったワリエワ
北京五輪ではドーピング疑惑もあり本来の力が発揮できなかったワリエワ

 北京五輪のフィギュアスケート・女子シングルが始まる直前まで、カミラ・ワリエワ(ROC)は絶対的な優勝候補だった。

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 15歳でシニアデビューした今季、出場したすべての試合で優勝、世界最高得点を数回にわたり更新。2種類の4回転ジャンプとトリプルアクセルを跳ぶだけでなく、抒情的なショートと名曲『ボレロ』を使うフリーを滑りこなす表現力を持ち、死角のない圧倒的な強さを誇ってきた。

 北京五輪・団体戦でも、その強さは変わらなかった。ショート・フリーともに1位となり、ROCの金メダル獲得に貢献。またフリーでは4回転ジャンプを成功させており、これは女子シングルのスケーターとしては五輪で初めての快挙だった。

 しかし世界反ドーピング機関(WADA)は、昨年12月25日にロシア選手権で採取されたワリエワの検体から禁止薬物であるトリメタジジンが検出されたという分析結果を、RUSADA(ロシア反ドーピング機関)に報告していた。これを受けてRUSADAは8日、ワリエワに暫定資格停止処分を科し、ワリエワ側はこれに対して異議を申し立てた。それを受けてRUSADAが9日に処分を解除したことに対し、不服とした国際オリンピック委員会(IOC)、WADA、ISU(国際スケート連盟)がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴。CASが、ワリエワは16歳未満の保護対象者であることなどを理由に訴えを退け、ワリエワの個人戦出場が確定したのは14日。個人戦・ショートの前日だった。

 ワリエワの個人戦出場には、ドーピング疑惑が解決していないため成績は暫定のものとして扱われ、3位以内に入った場合、表彰式は行われないという条件がついていた。ワリエワはショートではトリプルアクセルでステップアウトしたものの、その後の演技をまとめて首位につけた。もちこたえた印象だったが、フリーでは抱えていたものがあふれ出るように演技がほころびる。まともに決まったジャンプは数えるほどで、4回転やトリプルアクセルのみならず、いつもであれば難なく跳ぶ3回転―3回転の着氷でもバランスを崩し、演技終盤では少しずつ音に遅れた。自身の持つフリーの世界最高得点より40点以上低い141.93というスコアに終わったワリエワは、総合4位で表彰台に立つことはなかった。

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