※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 摂食障害は、体形や体重に強いこだわりを持ち、極端な食事制限や過食・嘔吐を繰り返すなど食行動異常を中心に、さまざまな問題を引き起こす精神疾患だ。兆候に気づいたら、信頼できる専門家に相談することが重要になる。

【一覧】拒食症、過食症…摂食障害の代表的な症状は

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 摂食障害の患者は9割以上が女性で10~30代に多く、思春期に発症しやすい。国立国際医療研究センター国府台病院の河合啓介医師はこう話す。

「摂食障害の患者さんは病院にかかっている人だけでも21万人と推計されています。しかし『やせたままでいたい』という思いから受診につながらないことも多く、実際にはその何倍もの患者がいると考えられます」

 摂食障害は、低体重に陥る「神経性やせ症(拒食症)」と、体重は正常範囲の「神経性過食症(過食症)」に大別される。いずれも根底には、強いやせ願望と肥満への恐怖がある。

 拒食症は、極端な食事制限などで、体重を落とす。本人はほんの少しでも体重が増えることに恐怖を感じ、明らかにやせているのに、「まだ太っている」と思い込んでダイエットを続行する。過剰な運動をしたり、食べた後に吐いたりすることもある。河合医師は言う。

「脳に十分な栄養が届かないので、正常な判断ができなくなります。食べ物や体形へのこだわりはますますエスカレートして、さらにやせようとする。どんどん悪循環に陥ってしまうのです」

■低血糖や腎不全などさまざまな合併症も

 拒食症と診断される体重は、標準体重の80%以下。低栄養状態が進行すると、筋力が低下して疲れやすくなり、女性の場合は月経が止まる。低血圧や低血糖、腎不全といった内臓の障害、骨粗鬆症などさまざまな合併症が表れる。

「拒食症ではやせによる衰弱や合併症、自殺などで患者の約5%が死亡しています。血液中のカリウムが不足し、突然、不整脈や心停止に至ることもある。精神疾患の中で最も死亡率が高い病気なのです」(河合医師)

 また、低栄養によって集中力の低下や抑うつ、不安などの心理症状が表れることもある。

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