週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「前立腺がん治療」の解説を紹介する。

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 男性特有の臓器である前立腺はクルミほどの大きさで、膀胱の下に位置する。尿道を取り囲むようにあり、精液をつくる際に補助的に働くなどの役割をもつ。

 前立腺がんは65歳くらいから発症しやすくなり、年間の患者数は約9万2000人。男性のがん罹患数の第1位だ(2018年がん情報サービスのデータ)。

 前立腺の病気として、加齢に伴ってかかりやすくなる前立腺肥大症がよく知られている。前立腺肥大症が頻尿や排尿障害などの自覚症状が出やすいのに比べて、前立腺がんは自覚症状があらわれにくい。そのこともあって、がん検診や人間ドックでのPSA検査で見つかることが多い。

 前立腺がんには、ほかの部位のがんと異なる特徴が、いくつかある。

 まず、進行が緩やかで、とくに高齢者では、早急に治療を開始するのではなく、定期的な検査で経過をみる「監視療法」がおこなわれることがある。再発が5年以上経ってから起こることもあるため、5年生存率だけでなく、10年生存率も治療成績の指標となる。

 また、がんが前立腺内にとどまる初期の段階なら、手術と放射線治療とで比較して、がんの根治率、治療後の生存期間などに差がないことが明らかになっている。ほかの部位のがんでは、放射線治療が補助的な位置づけになっているものも多いなか、特徴的といえるだろう。そのため、手術を選ぶか放射線治療を選ぶか、決断に苦慮するケースもあるという。自分にとって最適な治療法を選ぶには、複数の側面から検討する必要がある。

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治療選択のポイントは?