医師が主人公あるいは医療現場を舞台にした医療ドラマや医療漫画が数多くあれども、なぜか皮膚科医が主人公のものは存在しない……。それを寂しく思っていた現役皮膚科医で近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は、「なんとかしなければいけない!」と行動に移すことにしました。

【写真】監修医が「思わずスカウトしたくなった」というスーパードクター役の俳優は

*  *  *

 私は皮膚科医ですが、2年目に赴任した病院が救急救命科の研修を必修としており、3カ月間、救急医として働いた経験があります。交通事故の患者さんが救急車で運ばれてくる傍らで、お子さんの発熱、急性アルコール中毒の対応、睡眠剤の大量服薬による自殺未遂など幅広く患者さんに対応しました。

 患者さんとの人間関係は救急外来だけのものでしたが、ドラマのような展開や人間模様がありました。実際に救急救命科をテーマとした漫画やドラマは数多く存在します。物語において、救急救命は絶体絶命の場面など、多くの見せ所が作りやすいためにテーマとしても取り上げやすいのでしょう。

 ほかにも、がん治療医を対象としたドラマや、病理を描いた漫画(後にドラマ化)、医師免許を持つ放射線技師など多くの分野の医者が主人公になっています。医療従事者という広い観点でいうと、看護師や薬剤師も取り上げられ、漫画となりヒット作はドラマ化されています。しかしながら、皮膚科医がドラマの主人公になったことは今までなく、皮膚科医の私は少し寂しい思いをしてきました。

「世の中になければ自分が作ればよい」

 何人かに同じようなことを言われましたが、私は脚本家でもなければ漫画家でもありません。それに、自分で皮膚科医をやりながら気がついていましたが、ドラマ化できそうなハラハラする場面に遭遇することがほとんどない……。

 このままでは皮膚科医は未来永劫(えいごう)、地味な職業として人々に認識されることになる。なにより、皮膚科医に憧れて皮膚科を選択してくれる医師が減っていってしまう。なんとかしなくてはいけない。誰に頼まれたわけではなく、勝手に使命感を感じた私は、どうしたら皮膚科医が漫画やドラマの主人公になれるのか専門家にお話を聞くことにしました。

著者プロフィールを見る
大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

大塚篤司の記事一覧はこちら
次のページ