イラスト/さとうただし 週刊朝日ムック『歴史道 Vol.10』から
イラスト/さとうただし 週刊朝日ムック『歴史道 Vol.10』から

 一国一城の主・大名。家臣、領民からは雲の上の存在だったお殿様たちは、どのような生活を営んでいたのか。週刊朝日ムック『歴史道 Vol.10』では、江戸三百藩の暮らしと仕事を徹底解説。お殿様の一日の過ごし方を覗いてみよう。

【イラスト解説】お殿様は忙しかった! 伊達政宗の1日スケジュール!(全11枚)

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 参勤交代制度により国元と江戸の二重生活を余儀なくされた大名たちは、どのようなタイムスケジュールのもと日々の生活を送っていたのか。仙台藩祖伊達政宗の事績が記された「政宗一代之行儀」(伊達成実著『政宗記』所収)などから殿様の一日を再現してみよう。国元仙台での一日である。

 午前6時に城内の「奥」のエリアで起床した政宗が最初にしたのは、寝床の上で髪を自分で束ねることであった。その後、厠(便所)へと向かった。用を済ませると、寝床で煙草を吸うのが朝の日課となっていた。

 政宗が煙草を所望すると、警護役を勤める小姓がその用意をするのだ。煙草を吸う時は寝床の上に虎皮を敷かせて必要な道具を置かせ、蝋燭の火で3服あるいは5服吸った。

 煙草を吸い終わると、寝床から出て「閑所」と呼ばれた小部屋に入る。側近たちから様々な報告を受け、適宜指示を与えたのだろう。この部屋にいる間は、香を常に焚かせている。朝の執務が終わると風呂場に向かうが、行水の前に朝食の献立表を見て、食べたくないものがあれば指示を与えて修正させた。

イラスト/さとうただし
イラスト/さとうただし

 行水の前に、腰の大小刀を刀掛けに置き、広蓋の上には行水の後に着る小袖や帯、そして印籠、巾着、鼻紙を揃えさせた。行水の仕方に加え、バスタオルの代わりに浴衣をもって濡れた身体を小姓に拭わせる方法も細々と決まっていた。行水の後は、広蓋の上に用意させた小袖を着用して帯を締める。印籠を身に付け、巾着や鼻紙を懐に入れた。ここまでが「奥」で、以後は「表」の行動となる。

 居間に出ると、小姓に髪を結わせた。いよいよ、朝食の時間がやって来る。午前9時のことである。

 食事は政宗一人で取るのではなく、「相伴衆」と呼ばれた側近たちと一緒に食べることになっていた。名前のとおり、御相伴させたのだ。小姓をして呼びに行かせ、彼らの膳も用意させた。相伴衆が席について膳の用意が整うと、政宗は箸を持って茶碗に手を掛けた。これが食事開始の合図であり、相伴衆たちも箸を取った。一の膳を食べ終わると、二の膳がそれぞれ運ばれた。

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酒を飲む前にうがいをしていた?