「数年前、カリフォルニアで(MLBヒッティング・コンサルタントの)ブラッド・ボイヤーとクレイグ・ウォーレンブロックのチームにバッティングの指導を受けたんだけど、それが大きなインパクトになっていて、スイングやタイミングに関しては、それを継続しているんだ」

 クレイグ・ウォーレンブロックといえばメジャーを席巻した『フライボール革命』の元祖といわれる打撃インストラクター。十分な打球速度と発射角度を兼ね揃えたオースティンの迫力のあるバッティングは、名伯楽の指導から生まれている。

 またオースティンの持ち味は打撃ばかりではなく、走塁や守備における貢献も見逃せない。三浦大輔監督は「走塁でも守備でも全力でプレーする外国人は、僕が今まで見た中では一番。打って、走って、守って。外国人だけど日本人のお手本になる選手」と高い評価を下している。

 他の選手に刺激を与える存在としてプレゼンスを高めてきた2年間、昨季オースティンにグラウンド外で変化が生まれたとすればチームメイトとのコミュニケーションがより密になったことだろう。

 開幕直後の大連敗中にチームに合流したオースティンは、消沈するチームメイトやスタッフたちを鼓舞しようとお揃いのTシャツを全員に配ったり、また勝ち試合を落とす投球をしてしまいバックヤードでひとり落ち込むピッチャーにそっと寄り添い「おまえのピッチングはすごい。自信を持て」と声をかけるなど仲間思いの気配りを見せていた。

 また牧秀悟や森敬斗といった将来性豊かな若手にも笑顔で積極的にコミュニケーションをとり、なかでも前半戦の終わりのころ、右の大砲候補として期待されながらなかなか結果を出せず苦しんでいた5年目の細川成也にオースティンは「オフになったらアメリカで一緒にトレーニングをしよう」と声をかけている。実際、11月に細川はオースティンらとカリフォルニアで合流し、ともに汗を流した。同じ右のパワーヒッターの細川に可能性を感じたオースティンの粋なはからいだった。

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オースティンは今や“精神的支柱”