明治神宮大会を制した大阪桐蔭
明治神宮大会を制した大阪桐蔭

 3月18日に開幕する第94回選抜高校野球大会。その出場校32校を決める選考委員会が1月28日に行われる。本格的な高校野球シーズンの到来はまだ先だが、選抜大会への出場が絶望的となっているチームも含め、2022年の高校野球界の勢力図について、昨年の秋季大会での戦いぶりをもとの探ってみたいと思う。

 秋の時点で最も力のあるチームと言えば、やはり大阪桐蔭になるだろう。大阪府大会では4回戦の東大阪大柏原戦では5対4、準決勝の履正社戦では5対3と苦しんだものの、近畿大会では4試合で31得点、2失点と危なげない内容で優勝。続く明治神宮大会でも3試合連続二桁安打の猛攻で見事に秋の頂点をつかみ取って見せた。旧チームからのレギュラーは捕手の松尾汐恩だけだが、それ以外にも伊藤櫂人、海老根優大、丸山一喜など力のある打者が揃い、打線の迫力はとても秋の新チームとは思えないレベルだった。

 投手では新2年生の前田悠伍が近畿大会の3試合、17回を投げて自責点0と抜群の安定感を見せるなどエース格へと成長。早くも来年のドラフト上位候補という声も聞かれる。しかしそんな大阪桐蔭も不安要素がないわけではない。まず大きな課題は前田以外の投手陣だ。明治神宮大会でも川原嗣貴、川井泰志、藤田和也の3人が短いイニングでの登板ながら失点し、決勝戦で先発した別所孝亮も3回を無失点に抑えたものの、被安打3、1四球と安定感には欠ける内容だった。

 いくら前田が素晴らしいと言ってもまだ下級生だけに、3年生の奮起がなければ甲子園で勝ち抜くことは難しいだろう。もう一つの不安材料が守備面だ。神宮大会でも内野の要である二遊間がエラーを記録するなど、細かいミスが目立った。公式戦の経験が少ないメンバーだけに仕方のない部分はあるが、この冬の間にレベルアップしていなければ、足元をすくわれる危険性もあるだろう。

 選抜出場が濃厚となっているチームで、大阪桐蔭に続く存在となるのチームとしては花巻東、山梨学院、木更津総合、京都国際、広陵、九州国際大付などが挙がる。花巻東は新2年生ながら既に高校通算50本塁打を放っている佐々木麟太郎とその後ろを打つ強打のキャッチャー田代旭を中心にした強力打線が持ち味だ。技巧派左腕のエース萬谷大輝の特徴を生かすためにも、スピードのある本格派投手の台頭が待たれる。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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大阪桐蔭、花巻東に続く存在は?