オリックス時代のイチロー(左)と阪神時代の新庄剛志(写真提供・オリックス・ブルーウェーブ/阪神タイガース)
オリックス時代のイチロー(左)と阪神時代の新庄剛志(写真提供・オリックス・ブルーウェーブ/阪神タイガース)

 イチローと新庄剛志。ともに1990年代から2000年代にかけてNPB、メジャーを舞台に数々のスーパープレーでファンを魅了した二大スターだが、意外にも現役時代に両者の競演シーンが見られる機会は、ほとんどなかった。

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 NPB時代はイチローがパ・リーグ、新庄がセ・リーグ、メジャーでもイチローがア・リーグ、新庄がナ・リーグといずれも異なるリーグに所属していたからだが、そんななかでも、両者の数少ない対決が実現し、ファンをワクワクさせたのが、NPB時代の99年のオールスターだ。

 同年はファン投票で、オリックス・イチローが史上最多(当時)の134万6504票、阪神・新庄がセ・リーグトップ(全体で2位)の91万5773票を獲得。「投票数を聞いてビックリ。(連続出場)6年目でこういう数字を聞いて感激します」とうれしさを噛みしめたイチローに対し、新庄も「投票してくださった方に感謝します。(第2戦の)甲子園ではホームランを打ちたい」と3度目の夢の球宴での活躍を誓った。

 7月24日の第1戦では、イチローが初回に巨人のルーキー・上原浩治からバックスクリーン左に先制ソロを放つなど、5打数4安打2打点の大活躍で、レフトの守備固めのみの出場だった新庄に差をつけた。

 だが、翌25日の甲子園での第2戦では、全セのトップバッターで出場した新庄が4打数3安打で存在をアピールする。

 そして、イチローとの記憶に残る絡みシーンが見られたのは、初回だった。

 先頭打者の新庄は、ロッテ・黒木知宏の外角直球を強引に引っ張り、三遊間を抜く通算6打席目の球宴初安打。これが全セ通算1000安打でもあった。

 関川浩一(中日)が四球で無死一、二塁としたあと、3番・高橋由伸(巨人)はライナー性の右前安打。二塁走者・新庄は当然先制のホームを窺った。

 すると、ライト・イチローは「三塁を回れ」と新庄に誘いをかけるように、ゆっくり前進して打球を処理すると、直後、本塁にズバッとストライク返球。三塁コーチの古田敦也(ヤクルト)が止めていなければ、新庄は本塁タッチアウトになっていただろう。 

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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