パートナーとの死別は想像以上の精神的ダメージになっている。写真はイメージ。(画像/PIXTA)
パートナーとの死別は想像以上の精神的ダメージになっている。写真はイメージ。(画像/PIXTA)

 死別は人生最大のストレスと言われる。特に配偶者やパートナーとの死別は重く、心身に大きな影響が出てしまう遺族は多い。生前に仲むつまじいほど悲しみは深くなる、と思う人がいるかもしれないが、「遺族外来」の専門医らによると会話のなかった夫婦や離婚した元夫婦でさえ、残された側がそうした状態に陥る例がある。「自分は大丈夫だろう、と思う方がいるとしたら、それは大いなる勘違いです」。専門医らが知ってほしいと願う死別の現実と、遺族外来の意義とは。

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 主にがん患者遺族の精神的ケアを目的として、2007年、臨床心理士の石田真弓氏と協力し、埼玉医科大学国際医療センターに全国初となる「遺族外来」を立ち上げた精神科医の大西秀樹氏。遺族外来には全国から泊まりがけで来る人もおり、これまでに石田氏とともに500人近くの診察に当たってきた。

「死別がこんなにきついとは思わなかった」
「ヒリヒリするような痛みを感じる」

 受診に来た人の大半は、こうした心境を打ち明ける。話を聞いてほしい、自分ではどうにもならない今の状態をどうにかしたいと、すがるような思いでやってくる。

 問診では臨床心理士がていねいに話を聞き、精神科の診断基準に沿って質問をしていく。保険診療となるので、健康保険も適用される。

 大西氏は死別のつらさをこう話す。

「死別とは、一緒に暮らしてきた配偶者やパートナーがこつぜんと『消えてしまう』ということ。2人がいた世界は二度と取り戻すことができません。経験したことのないつらさ、きつさで、まさに『人生最大のストレス』がかかるのです」

 それは2人の仲がとても良かったからでは? と思う人もいるかもしれないが、大西氏も石田氏も、臨床経験からそれをきっぱりと否定する。

「仲の良しあしは、実はまったく関係ありません。もし仮に、『さして仲良くないから自分は大丈夫だ』と思っている方がいるとしたら、それは大いなる勘違いです。味わったことのないストレスにさらされ、どんな人でも心身に大きな影響が出る可能性があるという事実は、早いうちから知っておいてほしいと思います」(大西氏)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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「解離性障害」になってしまう遺族も