1月17日、「ドカベン」「あぶさん」などの野球漫画で知られる漫画家の水島新司さんが肺炎のため死去していたことがわかった。82歳だった。「ドカベン」は多くの野球少年の憧れとなり、高校野球でもその愛称で親しまれた選手が多くいた。2020年12月2日に配信したAERAdot.の記事を再掲載する。

【写真】2020年にドラフト1位指名された「ドカベン」はこの選手

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 漫画「ドカベン」などの野球マンガで知られる漫画家の水島新司さん(81)が、12月1日、引退を発表した。タイトルの「ドカベン」は、ずんぐりむっくり体形の主人公で神奈川・明訓高校の4番捕手・山田太郎の愛称だ。ドカベンの登場以降、高校野球などで山田太郎と似た体形のスラッガーが登場すると「〇〇のドカベン」と呼ばれるようになった。

 1972年から週刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載され、爆発的な人気となったドカベン。

「気は優しくて力持ち」の主人公・山田太郎や、悪球打ちの岩鬼正美、「秘打」を駆使する殿馬一人ら個性あふれるキャラクターたちが強豪校に挑んだ。中でも山田太郎は、ここぞという場面で試合を決める一打を放つ頼れる存在な一方で、体形から想像がつく通り、足の遅さも際立っていた。

 そんな山田太郎と似た「元祖ドカベン」は、浪商(大阪・現大体大浪商)時代からその愛称で人気者になった故・香川伸行氏だ。

 170センチと小柄で丸顔、見事な「おデブ」体形で、ポジションも山田太郎と同じ捕手だった。甲子園では牛島和彦氏(元横浜ベイスターズ監督)とバッテリーを組み3度の甲子園に出場。1979年夏には史上初の3試合連続本塁打を放ち、そのキャラだけではなく本格派のスラッガーとして注目を浴びた。 

 その後、南海ホークスに入団。プロ初打席で特大の場外本塁打を放つなど、高卒1年目で8本塁打を記録。豪快な性格もプラスして、人気がさらに高まった。ただ、不摂生がたたってか、たびたび「太りすぎ」問題が取り上げられるようになり、一時期は体重が130キロにまで増加。一説には150キロ近くにまで達したとも言われている。

 プロ通算78本塁打。1989年のシーズン限りで引退後は、解説者や居酒屋経営に転じ、マスターズリーグでは登録名「ドカベン」でプレーした。その一方、糖尿病の合併症で腎臓を悪くし人工透析を受けるなど、健康面では問題を抱えていた。2014年に52歳の若さで、心筋梗塞で亡くなった。

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徐々に「ドカベン」を知らない選手も増え…