竈門禰豆子(画像はコミックス『鬼滅の刃』11巻カバーより)
竈門禰豆子(画像はコミックス『鬼滅の刃』11巻カバーより)

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

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鬼滅の刃』アニメ2期・遊郭編では、「鬼らしくない鬼」であるはずの禰豆子が、一転して凶暴化し、鬼化がさらに進んでしまった。優しい禰豆子を激情に駆り立てたのは、兄・炭治郎を傷つけた者への「怒り」だった。『鬼滅の刃』において「怒り」は「人間の鬼化」に大きな影響を及ぼしている。怒りに震えた禰豆子が、我を忘れて“凶暴化”した意味を考察してみる。

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■強い「怒り」を見せる禰豆子

「遊郭編」で、禰豆子(ねずこ)はこれまでにないほど凶暴化し、すさまじい姿に豹変した。相貌も変わり、額の片側には「角」が生え、体には鬼のアザのような「葉の紋様」が浮かび上がった。口元につけられた、戒めの「竹」も強く噛んで外してしまう。遊郭の鬼・堕姫(だき)に傷を負わされた兄を見て、禰豆子の怒りが爆発したのだ。

 これまでにも禰豆子が戦うシーンは何度もあったが、この遊郭編ほど、彼女が残酷な戦い方をする場面はなかった。理性のタガが外れてしまった禰豆子は、一般市民を「捕食」しようとまでしてしまう。行き過ぎた「怒り」が禰豆子から“人間らしさ”を奪っていく。

■竈門兄妹の「怒り」にまつわるエピソード

 もともと禰豆子も炭治郎も、正義感が強すぎるところがあり、ときおり見せる「怒り」の激しさは周囲を驚かせた。彼らの弟・竹雄は、こんなふうに語った。

<兄ちゃんと姉ちゃんはよく似てるよな 優しいけど怒ると怖い>(竈門竹雄/10巻・第83話「変貌」)

 炭治郎と禰豆子は、自分のためではなく、他人のために怒る。そして、その怒りが、本人も周囲をも燃え尽くすほどの激情に変わることがあった。

<人のために怒る人は 自分の身を顧みない所があるから そのせいでいつか 大切なものを失くしてしまいそうだから 怖いよ>(竈門竹雄/10巻・第83話「変貌」)

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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鬼の残虐行動には「感情」が大きく影響する