郵便局長会問題で揺れる日本郵政
郵便局長会問題で揺れる日本郵政

 顧客情報の政治流用といった問題が続々と発覚している全国郵便局長会。不祥事が相次ぐさなか、同会の幹部が組織内でマスコミ批判を展開していた。自分たちが不当に悪役にされていると怒り心頭のようだ。

【写真】朝日新聞、ダイヤモンドなどマスコミ批判が掲載された「九特」

 九州地方の郵便局長から昨年暮れ、「あなたの著書が取り上げられているよ」と教えられた。示されたのは、九州地方郵便局長会の会員誌「九特」に載った記事だった。

 そこには昨年8月16日に本市で開かれた会合で、九州地方郵便局長会会長で全国郵便局長会理事も兼ねる宮下民也氏があいさつで述べた一文が紹介されている。

「朝日新聞の記者が書いた本も、これまでで一番多く売り上げたという噂が入ってきましたが、結局購入しているのは関係者である社員等ではなかったのかなと思います」

 たしかにこれは、拙著『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』(光文社新書)を指しているとみられる。噂が立つこと自体はありがたいが、決して評価しているわけではないようだ。前後で痛烈なマスコミ批判が展開されていた。

「どれだけ我々が社会貢献しているかにはまったく触れずに、郵便局長会を悪役に仕立てるような切り口。何をか言わんやです」

 宮下氏がそう訴えながら名前を挙げたのは、週刊ダイヤモンドと朝日新聞だった。ダイヤモンドに対しては「郵政消滅」と題した昨夏の特集記事が「誹謗中傷」だと断じ、局長らが移転局舎の不動産を多く取得していると報じた朝日新聞記事も「批判的」だとしている。宮下氏は「このような外圧に踊らされないように」と会員らに求めていた。

 さらに媒体名こそ挙げなかったものの、「世襲制が悪いとの悪意に満ちた記事が掲載され、会社としても子弟の任用について対応が求められている状況です」と不満をぶちまけた。日本郵便が記者会見で否定してきた「郵便局長の世襲制」はやっぱり存在していたのか、と思わせる発言ではないか。

 郵政事業の創業から150年を迎えた昨年は、郵便局長による不祥事が噴出した1年だった。架空の貯金をうたった巨額の詐欺事件、郵便局内での億単位の現金横領、顧客情報の横流しの見返りにお金を受け取る収賄、数百万円単位に上る会社経費の不正請求、郵便局トイレでの盗撮未遂、トラブルとなった知人の自動車の損壊……などなど、犯罪や不正のオンパレードだった。

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郵便局の不正、犯罪が次々と