中川さんは今後も同様の事案があれば警察に積極的に相談するつもりだが、民事裁判に関しては「時間と労力がさらに奪われてしまうので、ケース・バイ・ケースで考えざるを得ない」という。

 ヤフコメの内容がたびたび問題視されてきたYahoo!ニュースが、違反した書き込みが増えた場合にコメント欄を非表示にする仕組みを導入した。

「コメントが表示されなくなる記事がそれなりにあることを考えると、問題のある書き込みがそれだけ多いということなんでしょうね。対応が遅かったとは感じますが、規制に動いたこと自体は良いことです。ヤフーだけではなく、ネットでの書き込みのルールが統制されて欲しいと思います」

 警察への相談から事件化、加害者の情報が伝えられるという経験をした中川さんは重ねて強く訴える。

「匿名だから何を書き込んでも大丈夫、と思っていても、実際はすぐ特定されてしまうんです。投稿してしまったら消しても遅いし、失うものは本当に大きいですよ。今後、ネット中傷への対応はもっと厳しくなっていくと思います。いま書き込みたい言葉を、リアルの世界で面と向かって言ったらどうなるか。リアルの世界の延長にネットの世界があると認識して行動する、そういう局面に入ったのだと感じています」

 失ったものの大きさを知るのは、加害者本人しかいない。知った後に悔いても、後戻りはできないのだ。(AERAdot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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