都内看取り件数1位・立川在宅ケアクリニック院長の荘司輝昭医師(撮影/白石圭)
都内看取り件数1位・立川在宅ケアクリニック院長の荘司輝昭医師(撮影/白石圭)

 自宅で最期を迎えたいという患者の希望を多くかなえた診療所はどこか――週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん 2022年版』(朝日新聞出版)では、全国1518件の診療所の「看取り件数」を独自調査により掲載している。東京23区+市部で「看取り件数」が最も多い診療所はどんな診療所なのか。日々往診をおこなう医師の思いを聞いた。

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 近年増えている「在宅医療」をご存じだろうか。患者が病院に行くのではなく、医師が患者の自宅に出向き、診療をおこなう。病院での過剰な医療で延命されて迎える最期とも違い、望まぬ形で突然自宅で亡くなるのとも違う。自らの意思で、住み慣れた自宅での穏やかな最期を選ぶ人を支える医療が、数ある在宅医療の形の一つだ。

 日本財団が2020年11月に67~81歳の男女に対しておこなった調査では、最期を迎えたい場所について「医療施設」と答えた人が33.9%だった一方、「自宅」と答えた人は58.8%だった。にもかかわらず、自宅で医療を受けながら最期を迎えたいという希望がかなうケースはまだ少ない。厚生労働省の「人口動態調査」によれば、2020年に亡くなった人の82%は病院のベッドで最期を迎えている。

 そのようななか、在宅看取りを積極的に支えてくれる診療所はどこか。表は、東京都での2020年6月~21年6月の診療所別「看取り件数」ランキングだ(上述のムックから)。

 看取り件数283件で、1位の立川在宅ケアクリニックはどのような診療所なのか。

■医師一人あたり40人近くを担当、看取り総数は4000人超

 東京市部の主要都市・立川。JR立川駅の一日の平均乗降客数は上野駅よりも多い。そこから多摩モノレールで4駅離れた閑静な住宅街にクリニックはある。

 2000年、立川市上砂町の調剤薬局の2階に在宅緩和ケア専門の診療所として開業。以来多摩地区を中心に在宅医療をおこない、16年には緊急往診や看取りなどに関する高度な実績を必要とする「在宅緩和ケア充実診療所」として厚生労働省の認可を受けている。00年に60人だった在宅患者数は、20年には150人程度を抱えるまでになった。常勤医師は4人。1医師あたり40人近くの患者を担当している計算になる。診療所全体で例年250人前後のがん患者を看取っており、21年12月20日までの看取り総数は4135人を数える。

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