若林歯科医師
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 歯のつめものやかぶせもの、マウスピースや入れ歯などを作るために欠かせない「型取り」。粘土のようなぐにゃぐにゃした材料を入れたトレーを口に入れるのが「イヤ」という人が多いようです。そのままの状態で材料が固まるのを待たなければならず「おえっ」となる。なぜあのような処置が必要なのか? ほかに苦痛のない方法はないのか? 歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞きました。

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 歯科の世界では歯型のことを「印象」と言います。歯型をとる=印象をとる、と言います。

 印象材にはいくつか種類がありますが、保険診療で一番よく使われるのがピンク色の「アルジネート」で、海藻に含まれるアルギン酸が主成分です。

 もとは粉末でこれに水を混ぜ、こねて作ります。水と混ぜたアルジネートはすぐに固まるので型取りの直前に、準備します。

 歯科医や歯科衛生士が、デンタルチェアを離れて、何かを混ぜる作業をしていたら、印象材を作っている可能性が高いでしょう。

 短時間で適度な硬さにしなければならないので、コツをつかむまで、一定期間、トレーニングが必要です。私は家族の中で一番、ホイップクリームを作るのがうまいと自負していますが(笑)、それはアルジネートをこねる作業を何十年もやっているからだと思います(最近は機械でアルジネートと水を混ぜることができるようになり、当院でも導入しています)。

 なお、アルジネートは比較的価格が安く、使い勝手も良いので保険診療を中心に、広く使われていますが、もっと精密な型を取るための方法として、アルジネートと一緒に溶かした寒天を入れる、シリコンゴムを使う(自費診療)、があります。

 参考までに、印象材が口に入ったときに「熱い!」と感じた場合は、寒天入りです(寒天はお湯で溶かして使うため、熱いのです)。

 印象材ができたらトレーと言う金属の入れ物に盛り付け、固まらないうちにすばやく、歯にくわえてもらいます。この状態で約3分間、我慢してもらい、トレーを「カポッ」と取り外すと、歯型が取れます。ここに石膏を流すと歯型の模型ができます。この模型を使って、歯科技工士に詰め物やかぶせもの、あるいはマウスピースや入れ歯などを作ってもらうのです。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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