日本ハム新入団会見での新庄剛志監督。
日本ハム新入団会見での新庄剛志監督。

 あの「新庄」が帰ってきた。プロ野球選手として活動していた新庄剛志は、現役を引退後、バリ島で悠々自適の生活を送っていた。そんな彼が日本ハムファイターズの監督に就任して、球界復帰を決めた。

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 球界だけではない。12月6日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ)では監督就任後初のバラエティ出演を果たし、テレビ界にも正式に復帰した形となった。

 個人的には、新庄がここまでの完全復活を成し遂げるとは思っていなかった。現役時代の彼のプレーヤー兼エンターテイナーとしての活躍は華々しいものだったが、引退後は彼のニュースを耳にする機会も少なくなり、どこかおとなしくなってしまったような気がしていたからだ。

 私がそれを確信したのが、2017年に新庄が『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)に出演したときのことだ。彼は久々に本格的なバラエティ出演を果たし、巨額の金銭トラブルに遭っていた過去をテレビで初告白した。

 新庄は教室風のスタジオで教壇に立ち、生徒役のタレントたちを前にして授業を行っていたのだが、どうにも様子がおかしかった。ろれつが回っていなくて言葉が聞き取りづらかったし、整形を繰り返したと思われる見た目も異様だった。常識外れの言動から現役時代は「宇宙人」と呼ばれていた彼が、本当に別の惑星から来たような姿に変貌していたのだ。

 だが、「新庄劇場」はそこで終わらなかった。2019年には現役復帰を宣言して、そのためのトレーニングを開始。2020年にはトライアウトに参加して話題を呼んだ。そして、2021年には来季の監督として球界に堂々と復帰したのだ。

 監督就任会見では、完全復活した新庄の姿が見られて安心した。野球に関することは真面目に語り、それ以外のところではひたすらふざけて見る者を楽しませる。あの頃の新庄が戻ってきた感じがした。

『しゃべくり007』でも新庄はフルスロットルだった。マシンガントークが止まらず、話を振られる前からガンガンしゃべり続ける。監督就任までの経緯などのみんなが興味のある話題にも触れつつ、オチのある面白いエピソードを次から次へと惜しみなく披露していくその立ち回りは、一流のテレビタレントにも引けを取らないものだった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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