空爆からジャングルに逃げてきたカレン族の人々(KPSN提供)
空爆からジャングルに逃げてきたカレン族の人々(KPSN提供)

 ミャンマーと「独自のパイプ」を強調する日本政府の対応はあいまいなままだ。日本は欧米と一線を画し、ミャンマーに経済制裁などの強硬手段はとっていない。新規の政府開発援助(ODA)を停止し、欧米とともに民主政治の復活を訴えているものの、民主派への接触が少ないとみられている。

 ミャンマー人からは日本に対し、「口だけの民主化支援ではなく、(経済制裁などの)強硬手段を取ってほしい」「民主派が設立した挙国一致政府(NUG)を正式な政府として認め、支援してほしい」といった声が相次いでいる。

■笹川氏のミャンマー訪問、批判的な見方も

 11月には、ミャンマー国民和解担当の日本政府代表を務める日本財団の笹川陽平会長がミャンマーを訪問し、軍評議会トップのミンアウンフライン最高司令官などと会談した。

軍の砲撃を受けたとされるカレン族の村(KPSN提供)
軍の砲撃を受けたとされるカレン族の村(KPSN提供)

 笹川氏は、国軍に拘束されていた現地メディアの米国人編集幹部の解放について、同司令官に直接働きかけたと明らかにした。実際、その後に米国人は解放された。

 一方でミャンマー人からは、「なぜミャンマー人ジャーナリストは助けてもらえないのか」との疑問の声も上がった。現地ではいまもなお多くのジャーナリストらが拘束され、拷問されたり殺害されたりしているからだ。

 軍の弾圧におびえる知人のミャンマー人ジャーナリストは、「国際社会は、私たちのことを忘れてしまったのか」と嘆く。

 ■乾杯は「友人を励ます歌」

避難民キャンプの住民らに取材を続けていると、どこからともなく聞き慣れた日本の曲が聞こえてきた。

 耳を澄ますと、長渕剛のヒット曲「乾杯」が、ビルマ語で弾き語りされていた。

国軍の空爆から逃げるカレン族の人々(KPSN提供)
国軍の空爆から逃げるカレン族の人々(KPSN提供)

 住民らによると、「乾杯」は現地の歌手がカバーして人気を博し、よく知られた日本の曲の1つとなっている。ビルマ語のカバー曲のタイトルは「慰め」だ。「フレンド」としても知られている。

  歌詞も原曲とは少し変わっている。

「友達よ、きみの幸せと成功を祈る。時に直面するであろう苦しみも乗り越えてくれ。悲しい涙は川に流せば、やがて海にたどりつく。勇気を出し、未来に向かって歩みを続けよう」

次のページ
なぜ、『乾杯』が好まれるのか?