カレン族の避難民キャンプ。高床式の住宅に人々が住んでいる(11月、泰梨沙子・撮影)
カレン族の避難民キャンプ。高床式の住宅に人々が住んでいる(11月、泰梨沙子・撮影)

 故郷の村は軍の監視下に置かれ、戻ればどのような仕打ちを受けるか分からない恐怖があるからだ。

 避難民キャンプに12年間暮らしているポーレカリラムさん(46)は、「ここにいるしか選択肢がない」と肩を落とす。医師が常駐していないため、基本的な医療も受けることは難しく、虫歯だらけの歯はボロボロだった。

 必要最低限の暮らしがままならない状況でも、避難民らは政府を頼ることができず、国際社会に支援を求めるしか方法がない。

 キャンプの責任者を務めるコドさん(48)は、「国軍には市民を殺すのをやめてほしい。国際社会からももっと訴えかけてほしい」と話す。

避難民キャンプの責任者を務めるコドさん(11月、泰梨沙子・撮影)
避難民キャンプの責任者を務めるコドさん(11月、泰梨沙子・撮影)

また、「食料や医療支援が足りていない」とし、さらなる支援の必要性を訴える。

 支援が送られてくるタイ側の都市は、川を越え、舗装されていない危険な山道などを3時間車で走らないとたどりつかない。これに加え、新型コロナの感染防止策のため、陸路での越境に制限がかけられていた時期もあった。支援を届けるのも容易ではない状況だ。

 ■平和的なデモ隊に軍車両突っ込む

ミャンマー側から撮影。川を隔てた向こうはタイ(11月、泰梨沙子・撮影)
ミャンマー側から撮影。川を隔てた向こうはタイ(11月、泰梨沙子・撮影)

 ミャンマーではカレン族だけでなく、複数の少数民族がこれまで国軍の弾圧を受けてきた。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、国内避難民の数はクーデター以前、37万人だったが、クーデター以降は新たに22万3000人増えている。

 さらには、クーデター以降は民族に関わらず、軍に反抗する市民すべてへの弾圧が続いている。

 ミャンマーの市民団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、2月以降に国軍に拘束された人の数は、12月6日時点で1万727人に達した。国軍の武力行使で死亡した市民の数は1303人だった。

 最大都市ヤンゴンでは12月5日、軍事政権に抗議するデモ隊に軍の車両が突っ込み、治安部隊が発砲して5人が死亡する事件が起きた。デモ参加者は少なくとも15人が拘束された。

 ヤンゴンではクーデター直後のような大規模なデモは、軍の抑え込みにより行われなくなった。ただ若者たちは小規模で散発的に集まり、平和的なデモを繰り広げている。こうしたデモに対しても、軍の手は依然として緩まっていない。

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