楽天ファンに一足早いクリスマスプレゼントだ。メジャー数球団が獲得に向けて調査をしていた田中将大が来季も楽天に残留することが決まった。 

 日本球界に8年ぶりに復帰した今季は4勝9敗、防御率3.01。打線の援護に恵まれず白星が伸びなかったが、試合をきっちり作る安定感は際立っていた。WHIP(1イニングに許す走者数)でリーグ2位の1.03をマーク。米国に駐在する通信員はこう語る。

「田中はまだまだメジャーのスターター(先発)で通用する。スプリットなど変化球の精度が高く、昨年まで不安視されていた直球も力強さを取り戻していた。メジャーでも実績のある投手なので米国メディアも田中の動向を注目していました」

  田中もメジャーに再び挑戦したい思いを口にしている。だが、MLBと選手会の新労使協定が期限までに合意せず、現地時間2日からロックアウトに突入したことが田中のみならず多くの選手の動向に影響した。ロックアウトの間は交渉が一切ストップし、再開のメドが立っていない。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が世界各地で拡散している情勢もあり、MLBに挑戦することは大きなリスクをはらんでいた。楽天で来季リーグ優勝を果たして、メジャーに挑戦した方が良いという考えに至るのが自然だろう。

 ただ、田中が残留しても来季の楽天は厳しい戦いが待ち受けている。今季は石井一久GM兼監督が就任し、田中、涌井秀章、岸孝之、則本昂大に黄金ルーキー・早川隆久を加えた先発陣は「黄金のローテーション」と形容されて優勝候補に上げられたが、結果は66勝62敗21分で3位。ディクソン、カスティーヨの両外国人が機能せず、負担がかかった浅村栄斗も打率.269、18本塁打、67打点と好調の時期が短かった。島内宏明が打率.257、21本塁打、96打点で自身初の打点王を獲得したが、打線全体が小粒な感が否めない。リーグワーストの45盗塁と機動力もなく、石井監督の志向する野球が見えにくかった。

次のページ
背水の陣の石井監督のタクトは?