ともにデビュー20周年を迎えた伊坂幸太郎さんと雫井脩介さんの新作
ともにデビュー20周年を迎えた伊坂幸太郎さんと雫井脩介さんの新作

 伊坂幸太郎と雫井脩介は、「同期」だ。昨年、ともに作家生活20周年を迎えた。雫井は『霧をはらう』、伊坂は『ペッパーズ・ゴースト』、今年に入り、1年遅れの「20周年記念作品」と言える渾身の書き下ろし長編を発表した。実は、2人はデビュー以来、互いの作品を送り合い、全作を読んで感想を伝え合ってきたという。その知られざる親交と、20年書き続けてきた小説家としての「核」を、初対談で明かした。「小説トリッパー」21年冬季号掲載の初対談の一部を抜粋して先行紹介する。

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──雫井さんのデビュー作『栄光一途』は2000年1月に刊行され、伊坂さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』は2000年12月と、同年にデビューしています。しかし、作風が大きく異なることもあり、お2人に厚い親交があったと聞いて驚く人も多いのではないかと思います。どのような経緯で交流されるようになったのでしょうか?

伊坂幸太郎(以下、伊坂):僕は第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞(『オーデュボンの祈り』)したんですが、雫井さんは僕のひとつ前の同じ賞を受賞されているんです。例えば江戸川乱歩賞とか歴史の長い賞だと受賞者がたくさんいて、OB・OG会じゃないですけど繋がりがありそうですが、僕らの賞は第5回で終わってしまったのでそもそも仲間がすごく少なくて……。

雫井脩介(以下、雫井):受賞者は合計7人でしたよね。伊坂さんが、最後の1人。

伊坂:僕の回で終わってしまったので、伊坂幸太郎がとどめを刺したみたいな見え方になっている(笑)。

雫井:その7人みんなと交流があったわけではないんですが、伊坂さんとは親しくさせていただくようになりました。

伊坂:初めて会ったのは、僕の回の授賞式なんですよね。ただ、僕はよく覚えていないんです。というのも、あの賞って選考会の当日に、最終選考に残った候補者全員が選考会会場のホテルのロビーに呼ばれるんですよね(笑)。緊張して待機していたら選考結果を聞かされ、すぐにそのまま授賞式に参加して、受賞者はスピーチをする。今考えてみるととんでもないシステムで、当日は丸1日ずっと気が気じゃなかったから。

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伊坂さんの受賞スピーチが印象に残っているという雫井さん