先住猫の「きな」。新入りは名前の一字をもらいました(提供)
先住猫の「きな」。新入りは名前の一字をもらいました(提供)

 飼い主さんの目線でのストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回お話を聞かせてくれたのは、福岡県在住のヨガ講師、児玉妙子さん。自営業の夫と高齢猫とのんびり暮らしていた夏の終わり、家の前で一匹の三毛猫と出会いました。その猫は顔に大けがを負っていて、獣医師によると「傷口からしてエンジンルームでの事故」だそうです。前編・後編にわけて掲載します。今回は後編。保護から2ケ月が過ぎると、その猫と猫をとりまく環境に変化がおきました。

【写真】瀕死の三毛猫は「ここにおるよー」と全身で訴える

 >>【前編:振り返った猫を見て「まさか顔に穴?」 ガリガリの一匹を保護した夫婦「どうか猫バンバンを」】から続く

 <前編の記事のあらすじ>
 顔に穴が空いてように大きなけがを負った野良猫。車のエンジンルームに入って事故にあったと思われました。傷は深く、生々しく治癒していない上に、病気もあり、相当厳しい状態。それでも児玉さん夫婦は見捨てることができず、保護することを決めました。先住猫いたので、隔離しながらの生活です。児玉さん夫婦は、まだ名前をつけることができず、親しみを込めて「あいつ」と呼んでいました。

けた外れのがんばりをみせる「あいつ」。獣医さんにも厳しいと言われていたが生命力を信じたい(提供)
けた外れのがんばりをみせる「あいつ」。獣医さんにも厳しいと言われていたが生命力を信じたい(提供)

*  *  *
 保護から2ケ月、「あいつ」に変化が起きました。

「あいつ」は玄関でひとりでいる時に、にゃあにゃあと鳴くようになったのです。ごはんをあげる時の狂わんばかりのトーンとは違う感じの声です。人恋しい、とでもいうような。

 もしかしたら、わが家にきて、外の生活では感じなかった「さみしい」という感情に出会ってしまったのかもしれません。大けがをしてしんどい時に、そばに人間でもなんでもいた方が気がまぎれるとか、そんな感じなのでしょうか。

 前編でも紹介したとおり、家には15歳の「きな」という茶トラのおばあちゃん猫がいました。大けがを負った「あいつ」は、白血病ウイルスは陰性、猫エイズが陽性でした。傷がひどいので、「きな」といきなり接触させないように隔離していたのです。だから「あいつ」は玄関のケージで生活していました。

著者プロフィールを見る
水野マルコ

水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

水野マルコの記事一覧はこちら
次のページ
助けた以上は精いっぱいやって命をつなぎたい