東京国際大のイェゴン・ヴィンセント
東京国際大のイェゴン・ヴィンセント

 師走を迎え、新春の第98回箱根駅伝(2022年1月2、3日)まで残り1カ月となった。第98回目となる今回の出走予定のランナーの中で「史上最強」と呼ばれるのが、東京国際大のケニア出身の留学生ランナー、イェゴン・ヴィンセント(3年)である。

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 デビューから衝撃的だった。1年生時に出場した2020年の第96回箱根駅伝が「人生初の駅伝」。3区(21.4キロ)を任されて8位でタスキを受けると、ダイナミックな走りで次々と前を走るランナーを捉え、11キロ過ぎに7人抜きでトップへ。そのまま独走を続け、これまでの区間記録を2分01秒も更新する59分25秒の区間新記録をマーク。初めて1時間を切ったこのタイムは、ハーフマラソン換算で58分35秒というハーフ世界記録(58分1秒)に迫る驚異的なものだった。

 ヴィンセントは2度目の箱根路でも異次元の走りを披露した。新型コロナウイルスの影響で出雲駅伝が開催中止、全日本大学駅伝を欠場して迎えた第97回箱根駅伝。花の2区(23.1キロ)に登場して14位でタスキを受けると、一歩踏み出す毎に前を走るランナーとの差を縮め、6.8キロ付近で8人いた2位集団に追い付くや否や、各大学のエースたちを「周回遅れ」の如く一気に抜き去った。さらに9.2キロ付近でトップに立つと、終盤の権太坂も問題なく登り切り、前年に東洋大・相澤晃が樹立した区間記録を8秒更新する1時間05分49秒の区間新記録をマークし、「最強」の称号を確かなものにした。

 だが、過去にも「最強」と呼ばれた留学生は存在し、そのパイオニアだったのが、山梨学院大のジョセフ・オツオリである。1年生時、1989年の第65回箱根駅伝で2区を任されると、7人ゴボウ抜きの爆走を披露。以降も新興校躍進の象徴として快走を続け、箱根駅伝では3年連続の区間賞をマークし、チーム成績を7位、4位、2位と引き上げ、最終学年で迎えた1992年の第68回大会では、左膝じん帯損傷の怪我を負っていた中でも区間2位の執念の走りでチーム初の総合優勝に貢献。その名前と走りは、すべての駅伝ファンの記憶の中に強く刻み込まれている。

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これまで最強クラスの留学生ランナーが登場も…