11月末に撮った1枚。明ノ心くんは8歳、明徳くんは6歳になった(写真=明美さん提供)
11月末に撮った1枚。明ノ心くんは8歳、明徳くんは6歳になった(写真=明美さん提供)

 あれから8年。明ノ心君は今年、1人でトイレができるようになり、おむつが取れた。少し前までは目を合わせることがなかったが、徐々に表情が豊かになり、明美さんの顔をのぞき込んできて笑顔を作ることも増えた。

 明美さん自身が驚かされたこともあった。明美さんは毎日、入浴後にアイスを食べるのが日課なのだが、昨夏のある夜、明ノ心君が入浴後の明美さんに突然、冷凍庫からアイスを持ってきてくれた。

「こんなことがあるのって、あの瞬間は本当にびっくりしました」

 子どもの成長に、母も学ぶのだ。「生まれてきてくれてありがとうって、今は心からそう思います」

 明美さんは、自分たちの手で作ったマークに何を願うのか。

「マークが、明ノ心のような障害がある人と、周りの人をつなぐ、架け橋になってほしいと願っています。障害を主張するのではなく、知ってくださった方、その一人一人に、こういう障害や症状があるんですよと丁寧に説明していくことで、少しずつ社会が変わっていけばと考えています」

 障害があることを「見える化」することで、聞いてはいけない、触れてはいけない、と決めつけがちな健常者の心のハードルが下がるかもしれない。それも明美さんの思いだ。

「私が死ぬまでに、明ノ心にどんな環境を残してあげられるか。泣いている暇なんてないですよね」

 かつて大泣きした母は、笑顔で言い切った。(AERAdot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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