ここがPCR検査施設だった。外国人にはなかなかわかりずらい
ここがPCR検査施設だった。外国人にはなかなかわかりずらい

「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。今回は、エジプトからの帰国について。

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 前回に続き、コロナ禍の旅。エジプトとエチオピアを訪ねた。エジプトのカイロ滞在は4日間だった。そこから日本に帰国する。

 ということは……。カイロでPCR検査を受けなくてはいけなかった。日本に入国・帰国するには、全員PCR検査の陰性証明が必要だった。

 カイロの街で、スムーズに検査を受けることができるだろうか。不安だった。頼りにしたのが、カイロのある日本大使館の情報だった。エジプト在住の日本人が帰国するときのための情報だった。

 カイロに着いた日、検査施設を訪ねようとした。何時間ぐらいで結果がでるのか、予約は必要なのか、休日は?……といったことを確認したかったのだ。

 カイロの下町を、住所とグーグルマップを見ながら30分ほど歩いた。みつからない。アラビア文字とアラビア数字の世界。このへんだと思うのだが……。困って菓子店の若者に訊いてみた。案内してくれるという。レンガづくりの古びたビルをひとまわり。菓子店とは反対側の入口で、「この2階」と教えてくれた。こんなところにあったのか。看板はあったが、アラビア文字。日本大使館のリストのトップにあった検査施設だったのだが。

 しかし受付カウンターはまったく英語が通じなかった。互いにネットの翻訳を使っての会話。フライト前日に検査すれば翌日には……というところまで漕ぎついたが、そこで72時間縛りが頭をもたげる。日本は検体採取が日本到着前72時間以内と決めていた。飛行機に乗っている時間は20時間近くになる。途中でトランジットがやはり20時間ほど。検体をとるの時刻が前日朝の10時とすると、70時間を超えてしまう。ぎりぎり? 飛行機が遅れると入国できない?

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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