慶応大・生井惇己(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)
慶応大・生井惇己(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)

 高校の部は大阪桐蔭、大学の部は中央学院大の優勝で幕を閉じた明治神宮野球大会。来年のドラフト候補にとっては最初の大きなアピールの場となったが、活躍の光った候補選手を中心に紹介したいと思う。今回は大学生編だ。なお取り上げるのは、2022年にドラフト対象となる選手に限定している。

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 投手で今大会目立ったのが生井惇己(慶応大)、木村光(佛教大)、渡辺翔太(九州産業大)の3人だ。生井はリーグ戦ではリリーフでの登板が多いが、準決勝の神奈川大戦で先発を任せられると5回を自責点1、9奪三振と好投。全身を使ったダイナミックなフォームでストレートはコンスタントに145キロ前後をマーク。130キロ台の縦のスライダーも打者の手元で鋭く変化する。今年に入ってから右手の上げ方を少し小さくしたことで制球力もアップした印象を受ける。貴重な本格派サウスポーとして春以降も注目だ。

 木村は奈良大付時代からまとまりのある好投手という印象だったが、大学で着実にスケールアップし、不動のエースとしてチームの春秋連覇に貢献。関西5連盟第1代表として臨んだ今大会も初戦の近大工学部戦で8回を被安打2、無失点、11奪三振と圧巻のピッチングを見せた。173cm、70kgと投手としては小柄だが、高い位置からスムーズに腕が振れるために上背以上にボールの角度があるのが長所だ。カーブ、スライダー、フォーク、全ての変化球が高レベルで、あらゆるパターンで三振を奪うことができる。フィールディングや牽制など投げる以外のプレーも見事だ。現在は140キロ台前半のストレートのアベレージが145キロ程度まで上がってくれば、大学からのプロ入りも見えてくるだろう。

 ストレートの勢いが目立ったのが渡辺だ。今大会で登板した全投手の中で最速となる148キロをマークしたが、フォームに躍動感があり、数字に見合う勢いが感じられる。しっかり腕を振ってスライダー、カットボール、フォークも操る。準々決勝で国学院大に敗れたものの、渡辺自身は7回を1失点、7奪三振としっかり試合を作った。課題は少しリズムが単調で、フォームにもボールにも緩急がないところ。チェンジアップや大きいカーブなど抜くボールをマスターすればストレートがもっと生きてくるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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