大阪桐蔭の松尾汐恩
大阪桐蔭の松尾汐恩

 高校の部は大阪桐蔭、大学の部は中央学院大の優勝で幕を閉じた明治神宮野球大会。来年のドラフト候補にとっては最初の大きなアピールの場となったが、活躍の光った候補選手を中心に紹介したいと思う。今回は高校生編だ。なお取り上げるのは、2022年にドラフト対象となる選手に限定している。

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 投手は2018年の奥川恭伸(星稜→ヤクルト)や前回大会の高橋宏斗(中京大中京→中日)のような上位指名が確実視されるような選手は不在という印象だったが、一冬越えた時の成長ぶりに注目したいのが森山陽一郎(広陵)だ。中国大会では4試合すべてに登板して防御率0.65と見事なピッチングを見せてチームの優勝に大きく貢献。神宮大会では大阪桐蔭との決勝戦こそ4回途中5失点(自責点4)と打ち込まれて負け投手となったものの、3試合全てに先発し、エースとしての役割は果たした。

 今大会で最大の武器となっていたのがカーブだ。一度浮いてから鋭くブレーキのかかるボールで、落差の大きさもかなりのものがある。対戦した打者は目線がどうしても上がり、なかなか自分のスイングをすることができていなかった。変化の大きいボールはコントロールすることが難しいが、ストレートと変わらない腕の振りで低めにしっかり投げられるのは得難い長所である。

 もうひとつの武器であるフォークも少し制球はばらつくもののブレーキがあり、ストレートを見せ球にしてカーブとフォークで打ちとるというパターンが目立った。一方で課題となるのはストレートのスピードだ。今大会での最速は141キロと一定の速さはあるものの、ほとんどが130キロ台中盤から後半で、腕を振っている割にはボールの勢いがそれほど感じられなかった。冬の間に出力がアップして、コンスタントに140キロ台中盤をマークするようになれば、変化球がさらに生きてくるだろう。

 ストレートの強さが目を引いたのが辻田旭輝(クラーク国際)と松林幸紀(広陵)の2人だ。辻田は初戦の九州国際大付戦で4回2/3を投げて4失点(自責点3)で負け投手となったが、ストレートの最速は143キロをマーク。ステップの幅が狭く、上半身の強さで投げるフォームのため抑え込み切れずに浮くボールも目立ったものの、指にかかった時のストレートは勢いがあった。中指を痛めた影響で北海道大会に続いて背番号3だったが、春は万全の状態で不動のエースとしての活躍を期待したい。松林は決勝戦で森山の後の2番手として登板し、最速146キロをマークしてスタンドを沸かせた。左肩の開きもリリースも早く、タイミングを合わされやすいのは課題だが、馬力は大きな魅力である。森山と切磋琢磨してさらなる成長を期待したい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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