亡くなった兄弟(SNSより)
亡くなった兄弟(SNSより)

「入手先などはわからないが、油をまいて火を放ったことも認めている。恨みがあるなど、犯行動機はまだ供述していないが、どうも自暴自棄になっていた感じのことを口にしている」(捜査関係者)

 亡くなった2人の兄弟は、松尾さん夫妻にとっては自慢だった。

<息子の成長と家族の日記>というタイトルでSNSに侑城くんと真輝くんの日々の様子の写真を掲載している。2人が好きな野球をしている様子や、キャンプなどアウトドアが趣味で、笑顔いっぱいの2人が写っている。事件の約1カ月前が、侑城くん12歳の誕生日だった模様で、ケーキとプレゼントを前に2人が嬉しそうな表情を見せている。

 まさか、これが侑城くんの最後の誕生日になるとは、想像できなかったであろう。2人の小学校の友達は話す

「侑城くんと真輝くんは左打ちで、ようお父さんに野球を指導してもらっていた。『2人とも中学では野球部に入るねん』『左やから1番打ちたいな。阪神の近本みたいに』と侑城くんは言っていた。2人とも阪神が好きで、いつも帽子をかぶっていた。外に遊びに行くときは、いつもグローブを持っていくほど野球が好きやった」 

 SNSを見ても、侑城くんが阪神タイガースの帽子をかぶっている写真が数多くアップされている。留与容疑者が逮捕された日の夕方、近所の人によれば放火現場近くに松尾さん夫妻が来ていたという。

「旦那さんは子煩悩、奥さんは愛想のいい人ですよ。花を手にして沈痛な表情で声もかけれんかった。松尾さんのところは大きな田んぼを持っていて、春になると、2人の子供も手伝って田植えされていました。アットホームなご家庭でしたよ」

 SNSに母親は、<心を和らげ笑顔でいれば 幸も福もたくさん たくさん>という詩をシェア投稿していた。子供たちにも、そう教えていたのだろう。2019年7月に父親が書き込んだSNSは以下の通り。

 <末っ子真輝5歳の誕生日おめでとう。幼稚園にも慣れ園長先生や担任のお気に入り皆にも好かれる優しい子供に成長しています。今は侑城と熱烈な阪神タイガースのファンです>

 前出の捜査関係者はこう話す。

「放火した時間帯は、両親が家を不在していた30分ほどのタイミング。そこに可燃性がある油をまいて、放火している。留与容疑者からみれば亡くなった兄弟はかわいい甥っ子。なぜ、計画性、恨みがうかがえる犯行となったのか、今後、解明しなければならない」

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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