2019年カナダGPでのユ・ヨン
2019年カナダGPでのユ・ヨン

 一方、現在17歳のユ・ヨンは、2018年平昌五輪代表選考がかかる国内選考会で1位になっているが、年齢制限のため出場は叶わなかった。濱田美栄コーチにも師事しており、トリプルアクセルを武器に頭角を現し、母国開催の2020年四大陸選手権で2位に入っている。昨季は不調だったが、今季はスケートアメリカのフリーで4分の1回転不足をとられながらもトリプルアクセルを着氷させており、復調の兆しを見せている。

 NHK杯でもユ・ヨンはショート・フリーともにトリプルアクセルに挑んだが、二回とも転倒。他には大きなミスはなく3位に入ったものの、記者会見では悔しさを隠さなかった。

「自分自身に非常にがっかりしています。他のジャンプが成功したのはよかったのですが、トリプルアクセルにもっと集中して、次の大会ではミスがないようにしたいです」(ユ・ヨン)

 ユ・ヨンの今季フリーは、羽生結弦やネイサン・チェンのプログラムも手がけるシェイ=リーン・ボーンが振り付けた『レ・ミゼラブル』だ。ドラマチックな旋律はユ・ヨンの力強い滑りとよく合っており、トリプルアクセルが決まればプログラム全体の輝きがさらに増すだろう。シーズン後半に向け、どこまで調子を上げてくるか楽しみだ。

 ロシア勢・日本勢とはまた違う魅力を持つスケーターたちの活躍で、北京五輪シーズンのフィギュアスケートはさらに興味深いものになるだろう。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」