契約更改で“珍事”に襲われた今中慎二(写真・中日ドラゴンズ提供)
契約更改で“珍事”に襲われた今中慎二(写真・中日ドラゴンズ提供)

 今年もプロ野球選手たちの契約更改のシーズンが近づいてきた。

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 彼らが年俸アップやダウンに一喜一憂する姿は年末の風物詩でもあるが、交渉の席につく前にも、思わぬアクシデントに見舞われるケースも少なくない。そんな「まさか!」のエピソードを集めてみた(金額はいずれも推定)。

 交渉は通常球団事務所で行われるのに、場違いな結婚式場で契約更改をしたのが、中日・今中慎二だ。

 1998年、左肩故障の影響で2勝8敗、防御率5.34と不本意な成績に終わった今中は、12月20日の16時に球団事務所で契約更改する予定だった。

 だが、いつもより15分余裕を持って車で家を出たにもかかわらず、名古屋市の繁華街で大渋滞に巻き込まれ、にっちもさっちもいかなくなった。

 この日は17時からチームメイトの門倉健の結婚披露宴に出席する予定だったので、どちらも遅れるわけにはいかない。

「どうしよう?」と頭を抱えた直後、交渉相手の伊藤修球団代表から携帯に電話がかかってきた。

 実は、伊藤代表も車で球団事務所に向かう途中、渋滞に巻き込まれ、「もしや」と今中を案じて連絡してきたのだ。

 相談の結果、伊藤代表も門倉の結婚式に出席予定だったことから、「じゃあ、16時半に式場のホテルで話し合おう」ということになった。

 かくして、前代未聞の結婚式場での契約更改が実現したが、とんだとばっちりを食ったのが、球団事務所で待機していた報道陣。会場変更を知らされると、大慌てで移動するも、渋滞でタクシーが使えないとあって、テレビクルーも重たい機材を持って、地下鉄に乗る羽目になったとか。

 その後、今中と伊藤代表は、新婦側の控室を借りて交渉スタート。幸い下交渉が済んでおり、2500万円ダウンの1億2000万円でサイン。この間、たったの1分だった。

 大幅ダウンにもかかわらず、大きな花が飾られ、祝福ムードが漂うテーブルで会見した今中「まるで結婚式みたいですね」と苦笑するばかりだった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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