小児性愛障害者やそれに近い状態の大人を子どもに近づけてはならない。写真はイメージ(GettyImages)
小児性愛障害者やそれに近い状態の大人を子どもに近づけてはならない。写真はイメージ(GettyImages)

 この「認知のゆがみ」は、小児性加害者らに生まれつき備わったものなのか。斉藤氏は「真性の小児性愛障害者は遺伝的な要因に関する研究が進んでいますが、多くは混合型といわれる後天的なケースで、日本の社会の中で学習していくものだと考えられます」とし、こう説明する。

「例えば幼い子どもを性の対象にした二次的創作物やウェブサイトが日本には多くあり、その世界では子どもとの性行為が許容されています。これらに接し続けることで『子どもを性の対象として消費していい』という認識を少しずつインストールし、強化していく当事者もいます」

 今に始まった話ではないが、学校など子どもと関わる職業の大人が、立場を利用して加害行為に及ぶケースは後を絶たない。

 今年5月には「わいせつ教員対策新法」が成立した。性加害行為で教員免許が失効した教員に免許を再交付するかについて、都道府県の教育委員会が判断できるようになり、文部科学省では現在、再交付の基本指針について議論中だ。

 現在は、不祥事で免職となり教員免許を失効しても、3年たてば再取得できる。新法では、教員免許が失効した人から再交付の申請があった際、都道府県教委は第三者による審査会を設置し、その意見を基に「適当」と判断された場合に限って、免許を再交付できるとした。再交付するかについて各教委に「裁量」を与えた形だ。

 従来よりはハードルが上がるが、加害教員が再び現場に戻る可能性は残る。新法が成立した後も、全国各地で教員によるわいせつ事件や処分が報じられており、抑止力となるかについても不透明だ。

「児童らに性加害行為をした教諭を、再び子どもと関わる仕事に就かせることは絶対に防がなければなりません」と斉藤氏は強く訴える。

 斉藤氏は、専門家として、新法について文科省からヒアリングを受けていたが、「当時、文科省では加害者となった元教員に免許を再交付する条件をどうするかがひとつの論点になっていました。私は一貫して、いかなる人も戻してはいけないと主張していますが、このままでは再交付が起こり得る可能性を残したままになってしまいます」と危機感を強めている。

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