巨人の山崎伊織(左)と西武の若林楽人(写真提供・読売ジャイアンツ/埼玉西武ライオンズ)
巨人の山崎伊織(左)と西武の若林楽人(写真提供・読売ジャイアンツ/埼玉西武ライオンズ)

 良い選手は故障に強いということは間違いないが、それでも“ケガさえなければ”と思わせる才能を持った選手は少なくない。

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 近年引退した選手で真っ先に思い浮かぶのが内竜也(元ロッテ)ではないだろうか。川崎工(現川崎工科)時代は県立高校ながら高い注目を集めて2003年のドラフト1位でロッテに入団。1年目に早くも一軍のマウンドを経験し、二軍ではイースタン・リーグの最優秀救援投手にも輝いている。その後は肩、肘、足首などの故障もあってなかなか一軍に定着することができなかったが、好調時には圧倒的なピッチングを披露。2013年には26試合の登板ながら1勝2セーブ13ホールドをマークし、防御率1.05という数字を残している。

 ようやく1年を通じて活躍したのはプロ入り14年目の2017年。50試合に登板して5勝16セーブ11ホールドをマークすると、翌年はクローザーとして26セーブの活躍を見せた。しかしこの2年間の無理が祟ったのか再び故障に見舞われ、2019年以降は一軍のマウンドに立つことなく昨年限りでユニフォームを脱いでいる。プロ17年、実働12年という数字は十分に成功選手と言えるが、ケガさえなければ球史に残る成績を残していたことも考えられるだろう。

 原因はケガではないものの、万全の状態でのピッチングが忘れられない投手としては多和田真三郎(西武)もその1人だ。富士大では1年秋に出場した明治神宮大会で国際武道大を相手にノーヒット・ノーランを達成。2015年のドラフト1位で西武に入団すると、1年目からいきなり7勝をマークする活躍を見せている。翌年は故障の影響もあって成績を落としたものの、3年目の2018年には16勝をマークして最多勝を獲得し、チームのリーグ優勝にも大きく貢献した。

 しかし翌年、自律神経失調症による頻脈性不整脈を発症してチームを離脱。翌2020年もキャンプに参加することができず、3月下旬にようやく練習に復帰したものの、二軍での登板も5試合にとどまりオフには育成契約へと変更。今年は二軍での登板もなく、10月5日に球団から戦力外通告を通達されている。本人は現役続行を希望しているとのことでまだ復帰の可能性はあるが、大学時代とプロ入りから3年目までに見せていた浮き上がるようなストレートを再び見たいと願うファンも多いはずだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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今季も“ケガさえなければ”の新人が2人