ヒロインを演じる杏(左)と主演の小栗旬
ヒロインを演じる杏(左)と主演の小栗旬

 日曜劇場「日本沈没ー希望のひとー」(TBS系)が賛否両論だ。視聴率は初回から15%台を維持。今期の民放連ドラで最高レベルの数字を記録している。それを裏付けるように好意的な声も多いが、逆も少なくない。たとえば「原作が台無し」という声である。

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 この作品の原作は、小松左京のSF小説「日本沈没」。1970年代にベストセラーになり、何度も映像化されてきた。そのつど、原作からの差異が生じるのは当然のことだが、今回はそれがかなり目立つ。なにしろ、香川照之扮する地球物理学者・田所雄介以外はオリジナルキャラクターだ。

 主人公も、原作では深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫だが、今回は環境省の官僚・天海啓示(小栗旬)。これは主人公に、政府を動かし、国民を救おうとする役回りを与え、政治ドラマとしての要素を強めたいという思惑の反映だろう。ヒロインについても、財閥令嬢から週刊誌記者(杏)に変更され、主人公の大義に共感してともに戦う、という設定になっている。

 それゆえ「ー希望のひとー」というサブタイトルが付け加えられてもいるわけだ。いわゆるエクスキューズ(おことわり)である。

 また、TBSの公式サイトにも、こんな文言が。

「刊行から48年の時を経て、大きくアレンジを加えて新たにお届けする今作は(略)今だからこそ描くべき物語。沈没という目に見えない危機が迫る中で『見出していく希望』をテーマに描いていく」

 じつはこの「アレンジ」こそがヒットの秘密だったりする。早い話「日本沈没」というコンセプトが鉄板なので、あとは美味しいとこ取りをすることで成功につなげているのだ。

 そこで思い出されるのが、今から27年前、同じTBS系の金曜ドラマで放送され、ヒットした「人間・失格~たとえばぼくが死んだら」だ。当初「人間失格」のタイトルでスタートしたが、同名小説で有名な太宰治の遺族から抗議され、第2回からタイトルが変わった。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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