阪神のサンズ(左)と広島のバード (c)朝日新聞社
阪神のサンズ(左)と広島のバード (c)朝日新聞社

 11月7日、日本ハムは王柏融と来季の契約延長に合意したことを発表した。王は台湾プロ野球で2度の打率4割をマークし、2017年には三冠王に輝くなど圧倒的な成績を残して2019年に来日したが、3年間での通算成績は157安打、14本塁打、打率.243と高い期待に応えることはできていない。

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 ただ今シーズンは日本でのキャリアハイとなる9本塁打を放ち、61安打中29本が長打とようやく日本の野球に対応してきており、来年で29歳と年齢的にもまだ若いことも契約延長の後押しとなったと考えられるだろう。そこで今回は王のように今年は期待通りの活躍を見せることはできなかったものの、NPBで来季の躍進が期待できそうな外国人選手が他にもいないか探ってみたいと思う。

 投手でまず挙げたいのがバード(広島)だ。来日1年目の今シーズンはリリーフで33試合に登板して勝ち負けなし、11ホールド、防御率4.57という成績となった。数字だけ見るとかなり物足りないものに見えるが、詳しく見てみると33試合のうち失点を許したのは4試合のみ。7月3日の阪神戦で3失点、9月22日の巨人戦で6失点を喫したことが防御率に影響しているが、大きく崩れたのはこの2試合だけで10試合連続無失点でシーズンを終えている。

 左腕でありながら対左打者の成績がそれほど優れていないのは課題と言えるが、ストレートはコンスタントに150キロ前後をマークするスピードがあり、打者の手元で鋭く変化するスライダーも決め球として十分に使えるボールだ。チームの左のリリーフはルーキーの森浦大輔がフル回転の活躍を見せたものの2年目のジンクスが心配で、フランスア、塹江敦哉の2人も安定感に欠けるところがある。そのようなブルペン陣の状況を考えても、スピードのあるバードは貴重な存在と言えるだろう。

 セ・リーグの野手ではサンズ(阪神)を挙げたい。来日2年目の今シーズンは昨年を上回る20本塁打、65打点をマーク。前半戦は好調なチームを牽引する原動力となっていたが、夏場以降は大きく調子を落としてクライマックスシリーズにも出場することなくシーズンを終えた。マルテや来季の契約が残っているロハス・ジュニアなどの存在もあって退団の可能性が高いと報道されているが、甲子園の広さを苦にしないそのパワーは大きな魅力である。もしこのまま阪神を去ることになっても長打力不足に悩むチームは少なくないだけに、他球団へ移籍してプレーすることも十分に考えられるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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