※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 もう一人の50代のスタッフは、20代前半にうちに来た後、結婚・出産を経て、戻ってきてくれまし。

 彼女が歯科衛生士を目指すきっかけは、お母さんからの助言だったそうです。

 早い時期から、

「将来は女性も男性も関係なく、一生できる仕事に就きなさい」

 と言われてきました。

 高校生になると、さらに「歯科衛生士という仕事がいいのではないか?」とすすめられました。彼女は言います。

「私は『人と接することが好き』でした。母親はそのことを知っていたので、患者さんとじかに接することができる歯科衛生士をすすめたのだと思います。実際、自分にはこの仕事が向いていました。母親に感謝ですね」

 おもしろいことに、2人ともに共通していたのは、高校時代、「理系科目が苦手」ということでした。多くの医療系の仕事が受験で理系科目を必要とするのに対し、歯科衛生士の養成学校は文系科目で受けられるところが多かったのです。今でもその傾向は変わっていないようです。

「医療系の仕事に就きたいけれど、理科や数学は苦手」

 という人にはすすめられる仕事かもしれません。

 歯科衛生士に必要なことは主に手を使った細かな技術の習得です。例えば歯周病予防の基本はプラークと歯石の除去。少しでも取り残しがあるとそこから歯周病が再発する可能性があります。ていねいに、かつ正確に、さらに患者さんの苦痛がないように処置をしなければなりません。

 もう一つ大事なのがコミュニケーション能力です。処置の内容によっては、患者さんは歯科医師よりも歯科衛生士に接する時間が長くなります。また、歯科衛生士を担当制にしている歯科医院では、患者さんと何十年ものつきあいになるケースもあるからです。

 こうした点から、歯科衛生士をやりたいという意欲があり、かつ、人と接するのが好きな人にこそ向いている仕事なのではないでしょうか。

 前出の2人は、まさにこの条件にぴったりだったのでしょう。

次のページ