4年前、シニアに上がったばかりのアリーナ・ザギトワは破竹の勢いで勝ち進み、2018年平昌五輪でも金メダルを獲得した。そして北京五輪シーズンの今季、グランプリシリーズデビュー戦となるスケートカナダで優勝した15歳のカミラ・ワリエワは圧倒的な演技を披露、世界最高得点を更新している。気が早すぎる仮定だが、優勝候補と目されるワリエワがもし北京五輪で金メダリストになれば、二大会連続で15歳の少女が五輪の頂点に立つことになる。

【写真】美しすぎるロシアフィギュア女子の名演~ザギトワから新星・ワリエワまで~(10枚)

 氷を降りればあどけないワリエワだが、若いからといって決してジャンプだけに優れた味気ない選手ではない。まだジュニアスケーターだった昨季から継続するフリー『ボレロ』では、若いスケーターには荷が重いはずの名曲を自分のものにしており、2002年ソルトレイクシティ五輪金メダリストのアレクセイ・ヤグディンを泣かせる表現力をみせる。

 とはいえ、特にロシアで女子シングルスケーターの低年齢化が著しく、選手が第一線で活躍できる期間が非常に短いのは事実だ。現在ロシアのトップスケーターの大半が所属するエテリ・トゥトベリーゼコーチチームには優れた才能を持つ少女がひしめいており、門下生である平昌五輪金メダリストのザギトワ(19)、同銀メダリストのエフゲニア・メドベージェワ(21)は北京五輪の代表候補リストから外れている。ワリエワ、昨季の世界選手権金メダリストのアンナ・シェルバコワ(17)、同銅メダリストのアレクサンドラ・トゥルソワ(17)、2019年グランプリファイナル女王アリョーナ・コストルナヤ(18)など、代表候補の多くはエテリ組に属する10代のスケーターだ。

 そんな中異彩を放つのが、重鎮アレクセイ・ミーシンコーチに師事するエリザベータ・トゥクタミシェワだ。24歳の彼女には妖艶な魅力があり、ワリエワに次ぐ2位に入ったスケートカナダでも、10代の少女とは一線を画す色香の漂うプログラムで観客を沸かせている。一方で抜群の安定感を誇るトリプルアクセルを武器にしており、スケートカナダでも計3本成功させた。高難度ジャンプに挑戦し続けるアスリート魂も、トゥクタミシェワの魅力なのだ。

次のページ
「すべてが可能であることを示したい」