森下千里氏(C)朝日新聞社
森下千里氏(C)朝日新聞社

 10月31日に投開票された衆院選で、驚きの声が上がったのは宮城5区だった。自民党公認で出馬した元タレントの森下千里氏が61410票、得票率43.11%で落選。石巻市出身で立憲民主党の安住淳国対委員長が81033票、得票率56.89%で9期連続当選を果たした。投開票の翌日となった11月1日は森下氏の母親の誕生日。比例区での復活当選もかなわず吉報を届けられなかったが、その健闘ぶりを称える声が多い。

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「宮城5区は安住氏の地盤で、自民党候補は誰が出ても厳しい状況だった。ましてや名古屋出身の森下さんは落下傘候補で宮城との結びつきが薄い。正直無謀な戦いだと最初は感じました。その中で6万票以上の得票数は大健闘です。石巻に移住して辻立ちを毎日続けた姿勢に有権者の印象が変わりましたね。最初は街頭演説していても通り過ぎる人が多く、タレントという物珍しさで見る人も多かったが、猛暑で汗が流れる中でも髪を振り乱して東北の復興を訴え続けると、多くの人が足を止めるようになった。地元の産業に携わる人たちとも意見交換し、『勉強させていください』と低姿勢だったと聞きます。タレントからの政治家転身は冷ややかな視線で見られることが多いですが、森下さんはよく頑張ったと思います」(地元のテレビ関係者)

 森下氏は人気グラビアアイドルとして活躍し、女優としてテレビドラマ、映画などに出演。多くのバラエティー番組にも出演していた。

「場の空気を読むことに長けていましたね。出すぎることがなく、自分を客観視して求められている役割を全うしているように感じました。グラビアアイドルは若い子がどんどん出てくるのでそのまま芸能界から消えてしまうケースが少なくないんですが、森下さんは勉強熱心だったのでタレント、女優と活動の幅を広げられた。その時は政治家を志すなんて想像もできなかったですが」(スポーツ紙芸能担当記者)

 衆院選出馬の意向を表明したのは今年3月14日に。その覚悟は本物だった。石巻市内に母と移住すると、イメージカラーのピンクを基調とした服装にスニーカー姿で選挙区を回った。街頭演説で投票を呼びかけると、多くの有権者が耳を傾けるように。宮城県内に在住する50代女性は「今回の選挙は時間がなさすぎた。あと4年間は長いかもしれないが、地元の人達とコミュニケーションを取って地道に活動をすれば、次の選挙で安住さんに勝てる可能性は十分あると思う」と期待を込める。

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