事件直後、騒然とする京王線の国領駅周辺(C)朝日新聞社
事件直後、騒然とする京王線の国領駅周辺(C)朝日新聞社

「ものすごい勢いで乗客たちが走ってきた。その後にバットマンのジョーカーのような装いの男がゆっくりと刃物を持ってやってきた。ハロウィーンの演出かと思った」(乗客)

 惨事が起きたのは、ハロウィーンで厳戒の渋谷とは別の場所だった。10月31日午後8時頃、東京都調布市の京王線国領駅で乗客から「刃物を持った男がいる」と110番通報が入った。

 警視庁によると、走行していた八王子発新宿行きの特急電車内で、男が刃物で次々と乗客に切りつけ、その後に油のようなものを撒いて火を放った。乗客らが刃物で刺され、これまでに10代から70代の男女17人が重軽傷を負っている。通報で駆け付けた警察官が、自称・服部恭太容疑者(24)の身柄を確保。服部容疑者はその場で殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。身柄を警視庁調布署に移され、警視庁が現在、事情を聴いている。

「男は金髪で短髪。スーツにネクタイ姿で紫色のコートを身につけていた。身柄を確保した際には長めのナイフのような刃物を持っていた。これが凶器とみられる」(捜査関係者)

 警視庁によれば、この事件で70歳代の男性が意識不明の重体だという。

 男は事件を起こす前にある不可解な行動を取っていたという。

「車内でおもむろに煙草を取り出して火をつけて吸い始めた。それを注意した乗客に初めに襲いかかったようだ」(前出・捜査関係者)

 また男は警視庁の調べに対し「小田急の事件を参考にした。2人以上殺せば死刑になると思った」などと供述しているという。

 服部容疑者が参考にしたとされる、今年8月には小田急線の車内で起こった同様の事件では、犯人の男は次々と乗客を刃物で襲った後、火を放とうとしたものの失敗に終わっている。

 走行中の電車などで度々起こるこうした事件はなぜ、起こったのか。どうしたら防げるのか。危機管理に詳しい警察関係者が説明する。

「そもそもこの手の事件を防ぐことは不可能に近い。唯一の手立ては乗客が警戒心を持つことだ。現実は乗客のほとんどがスマホに夢中で周囲をみていない」

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自爆テロはどうすれば、防げるのか?