小選挙区で敗北した甘利明幹事長(右)(c)朝日新聞社
小選挙区で敗北した甘利明幹事長(右)(c)朝日新聞社

 自民党の甘利明幹事長が、自身の選挙区である神奈川13区で敗北した。現職の幹事長が敗れるまさかの事態に、党には衝撃が走っている。

【写真】目を閉じ、厳しい表情の甘利幹事長

 31日夜、各社の出口調査で厳しい情勢が伝えられるなか、甘利氏はテレビ局の選挙特番に相次いで出演。キャスターらから小選挙区で敗北した場合の幹事長の進退について尋ねられると「結論が出た後、進退は総裁にお預けするということです」と答えていた。

 その後、小選挙区での敗北が確定したことを受け、1日未明、幹事長を辞任する意向を岸田文雄首相に伝えたと報じられた。

 甘利陣営の幹部は、選挙結果をこう振り返る。

「地域によっては、公明票の伸び悩みもあったのかもしれません。よくない情報はありましたが、敗北とは…」

 5年前のUR(都市再生機構)をめぐる口利き金銭授受疑惑で、説明責任を問われてきた甘利氏。公明党の支持母体である創価学会の婦人部は「政治とカネ」を巡るスキャンダルに拒絶反応が強く、それが票の伸び悩みにつながったと陣営は見ている。

 甘利陣営は、争点が「政治とカネ」になってしまったことを敗北の理由にあげる。

「マイナスイメージのムードが作られてしまった。この問題についてまったく説明をしていないというわけではないのに、色メガネで見られてしまった。本当に必要な政治家だし、将来は総理になる人だと信じてきたのに」(陣営幹部)

 野党が一本化したことも痛手だったという。

「立憲民主党の福山哲郎幹事長も選挙区に入り、重点的にテコ入れされたようです。『そんなに楽な戦いではないだろう』と本人も言っていました」(同)

 一方、野党共闘で勝利した立憲民主党新人の太栄志(ふとり・ひでし)候補。太陣営の大波修二・大和市議はこう語る。

「甘利氏の過去の金銭問題がクローズアップされ、公明の票が逃げたんじゃないかと思いますね。それに、幹事長になってから大きな態度も発言も目立つし、上から目線。彼が采配をふるったら『桜を見る会』や『モリカケ問題』も、ずっと闇のままの状態になるのではないか。有権者はそのあたりを嫌ったのではないでしょうか」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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