平井卓也候補と小川淳也候補(C)朝日新聞社
平井卓也候補と小川淳也候補(C)朝日新聞社

衆院選挙、日本一激戦と言われる香川1区。ここで勝たせてください。ここで勝てば日本が変わるんです」

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 マスクをしながら、こう大きな声で訴えていたのは、立憲民主党から6回目の当選を目指す小川淳也氏だ。日本維新の新人、町川順子氏も出馬しているが、最大のライバルは菅政権下で9月まで初代デジタル担当相を務めた自民党の平井卓也氏。

 これまで平井氏が香川1区で小川氏に負けたのはたった1度だけ。平井氏は祖父、父から地盤を引き継ぎ、圧倒的な強さを誇る。

 メディア各社の序盤の世論調査では小川氏が先行していたが、終盤になって平井氏が猛烈に追い上げているという。

「平井氏が小川氏にリードを許すなんてこれまでの選挙ではありえんかった」

 平井氏を支援する自民党の県議はこうため息をつく。

 平井氏は演説でも危機感を強く訴えている。AERAdot.は10月23日の演説会の音声を入手したが、地元の自民党県議が「過激な発言を連発し、ヤバいんやないか」と危惧するほどだった。

 デジタル担当相の引継ぎなどで衆議院の任期満了まで仕事をしていた平井氏は地元入りが遅れたようで、支援者らに冒頭、こう挨拶した。

「今回は出遅れました。不徳の致すところ、死に物狂いです。長い政治経験で出遅れたのははじめて。今回は追っかけなきゃいけない。相手を捕まえないと立憲、共産党の連合政権の議員に渡ってしまう。お助けください」

 平井氏が「相手」と表現したのは、小川氏だ。ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』が大ヒットし知名度が急上昇。平井氏はこう危機感を露わにした。

「選挙をやってみて相手候補と土俵が少し違います。向こうは映画スターとしての人気があり、びっくりしました。あの映画を見て、応援している人が多い。私は映画のどっかで出されて悪役です。私に許可なく(映画に出して)、平井は悪いやっちゃというイメージがどんどん広げられている。本当の私の姿を伝える映画ではありません。ドキュメンタリーではなく、相手候補のPR映画。そのことを皆さんに理解してほしい。こういう選挙戦術が通用するならば、これからすべての議員が映画作りにいそしむと思いますよ。これでは政治がますますおかしなりませんか」

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音声を入手した平井氏の演説とは?