初の国内版となる『地球の歩き方 東京』が大人気。視点を少し変えただけでヒットが生まれた
初の国内版となる『地球の歩き方 東京』が大人気。視点を少し変えただけでヒットが生まれた

 秋の行楽シーズンがやってきた。「緊急事態宣言」は解除されたものの、ちょっとしたお出かけとはいえ油断せずに感染対策を怠らないことが重要だが、これまで我慢を積み重ねてきただけに、羽を伸ばしたい人も多いだろう。

【写真】五輪にあわせるように刊行が計画された『地球の歩き方』

 言うまでもなく、新型コロナウイルスの流行で旅行業界は苦境に立たされた。宣言が明けたとはいえ、すぐに以前のような活況が戻るわけではない。なかでも、海外旅行はいまだ難しく、航空機の減便や欠航は続いている。旅のお供として人気を博した旅行ガイドも、書店の売り場縮小、情報更新作業がままならないなど厳しい状況が続いた。だが、そんなコロナ禍だからこそ、生まれた斬新なアイデアもあった。さまざまな工夫と知恵を盛り込んだ新企画が好評となっている。

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「旅行ガイドの売れ行きは、緊急事態宣言の発令状況や全国の感染者数に左右されています。昨年は『Go To トラベル』などで一時的に売り上げが伸びた時期もありましたが、それでも市場回復には至らない状況です」

 出版物の動態調査などを手掛ける出版科学研究所の担当者は、旅行ガイドの厳しい現状を語る。そんな中、好調だった商品を聞くと、昨年9月に発売された『地球の歩き方』シリーズの「東京版」は、「かなり売れていた印象です」と話す。

■コロナ禍に逆転の発想

『地球の歩き方』といえば、海外旅行のバイブルのような存在。世界中のさまざまな国や地域ごとに観光スポットなどを1冊にまとめたガイドブックだ。だが、コロナ禍に見舞われて海外旅行ができなくなった昨年、特別版として発売したのが、『地球の歩き方 東京 2021~22』だ。実は、同シリーズが国内版を発売するのは初めてのこと。さらに、その2カ月前の昨年7月には、世界の国々の人口や面積といった基本データから、挨拶や雑学までを1冊にした『世界244の国と地域 197ヵ国と47地域を旅の雑学とともに解説』が発売され、その後『旅の図鑑』シリーズとして好評を得ている。

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長引くコロナで事態が一変