小柄ながら良きママぶりを発揮しためい(撮影・水野マルコ)
小柄ながら良きママぶりを発揮しためい(撮影・水野マルコ)

 飼い主さんの目線でのストーリーを紡ぐ新連載「猫をたずねて三千里」。今回、お話を聞かせてくれたのは東京都在住の女子中学生たくみさん(15)。両親が保護した野良猫のお腹に思いがけず赤ちゃんが宿っていて、家でいちばん落ち着けそうな、(一人娘の)たくみさんの部屋で出産させることになったのです。お産と育児の見守りから親子の別れまで、はらはらドキドキ……。猫をめぐるひと夏の物語。

【感動写真】おっぱいを探して子猫がモミモミ…ママ猫も優しい表情

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◆帰宅したら白猫が部屋に しかもお腹には……

 オリンピックで「真夏の大冒険」という解説があったけど、私もこの夏、大きな経験をしました。猫をめぐる出来事です。

 5月半ば、学校から帰ってきたら、母が「あなたの部屋に白い猫がいるから」と。見にいったら、少し汚れて灰色っぽい毛の猫がいました。父の会社のビルの脇に迷い込んだ猫で、父と目が合うと追いかけて歩道に出てきて戻らなかったらしいのです。それで、父から連絡をもらった母が迎えにいきました。

 その2日後、学校から帰ったら、「猫に赤ちゃんがいる」と母にいわれてびっくり。健康診断に連れていって妊娠がわかったそうです。

めいが住んでいたビルの隙間(提供)
めいが住んでいたビルの隙間(提供)

 獣医さんがいうには、「1歳未満。野良で育った猫で、これが初産」。家族会議をして、「おうちで産ませよう」と決まりました。当面、めいちゃんは私の勉強部屋で過ごすことに。今までにも猫を保護したことはあるけど、お産は初めて。家族中でドキドキです。

 ママ猫の名前は、「めい」にしました。ビルの隙間の暗い所にいたので、「明るい名にしてあげよう」と父が言い、『となりのトトロ』に出てくる女の子からもらいました。

出産前。日に日にお腹が大きくなり、お乳もめだつように(提供)
出産前。日に日にお腹が大きくなり、お乳もめだつように(提供)

 めいちゃんは本当に人懐こく、家に来て3日目で膝にぴょんっと乗ってきました。私が寝そべると胸や背中にも乗ってくる甘えん坊さんで、とっても可愛い猫。

 とにかく、めいちゃん自身が健康で“無事に産む”ことが大事ですからね。

 ネットで調べると、「産箱」があると猫が落ち着いて産んで、そこでお乳もあげられるとわかり、作ることにしました。

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水野マルコ

水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

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めいちゃんもママになる準備をしている