拳ひとつでファンを魅了し続ける井上尚弥 (c)朝日新聞社
拳ひとつでファンを魅了し続ける井上尚弥 (c)朝日新聞社

 日本史上最高のボクサーとの呼び声も高い井上尚弥。現在継続中の世界戦15連勝は日本歴代1位で、米ボクシング専門誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)では最高で2位となるなど、日本という枠を超え世界のボクシング史に残る名選手なのは間違いない。

【写真】井上のトレーニングを見守る、元ミス・インターナショナル日本代表の村山和実さん

 拳ひとつでファンを魅了し続ける井上だが、試合前の舌戦など何かと“うるさい"格闘家が多い中、井上は決して多くを語らないタイプのボクサーだ。

 そのため、リング外での姿がなかなか見えにくい部分もあるが、周囲の人間の目には井上はどう映っているのだろうか……。井上が昨年から導入した低酸素トレーニングを行う『高地トレーニングStudio. Green・Terrace』(以下、Green・Terrace)でオーナーを務める村山和実さん、そして井上が所属する大橋ボクシングジムの会長・大橋秀行氏に井上の強さの秘密がどこにあるのか聞いてみた。

 横浜にある大橋ジムと同じビルの6階にジムを構えるGreen・Terraceには、井上を含めたボクサーや、他競技のアスリートも多く訪れるが、まず醸し出す雰囲気からして違うという。村山さんは「一番感じるのは、トレーニングにいらっしゃる時のオーラです。また、とてつもない集中力の中でトレーニングされていることがパッと見ただけで伝わってきます」と練習に臨むその姿だけで既に他者とは異なる空気を身にまとっているようだ。

 そして、昨年から取り入れた低酸素ルームのトレーニングは大橋会長曰く「立っているだけでも非常に息苦しい環境になり、その中での走り込みなので、最初は倒れこむぐらいの選手もいました」と過酷な練習となるようだが、「継続して低酸素トレーニングを行うようになり、持久力は飛躍的にアップしました。これで1日のスパーリング数が少なくてもスタミナ強化ができ、実戦を少なくすることでケガも予防もできるようになりました」と、アスリートとして努力を惜しまず、常に成長することを求める姿勢を崩さないという。

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“常人離れ”したストイックさを感じた瞬間