睡眠作用のある薬を酒に混ぜるという卑劣な手口だった。写真はイメージ(gettyimages)
睡眠作用のある薬を酒に混ぜるという卑劣な手口だった。写真はイメージ(gettyimages)

 刑事裁判官だった経験を持つ片田真志弁護士は「今後、何の罪で何件起訴されるかによって量刑に差が出る」と前置きしたうえで、

「あくまで一般論としてですが、仮に10人への準強制性交罪で起訴された場合、懲役20年前後が目安になるでしょう」と指摘する。

 同様の事件の判例では、今年2月に、SNSで「写真撮影のモデル依頼」の名目で男性を誘い、計10人に睡眠薬入りの酒や食事を取らせて昏睡(こんすい)させ、性的暴行を加えたとして準強制性交等と準強制わいせつの罪に問われた元教諭の男に、大阪地裁が懲役20年の判決を下している。昨年12月には、マッチングアプリで出会った女性10人に同様の手口で昏睡させて乱暴などをしたとして準強制性交などの罪に問われた元銀行員の男に、東京地裁が懲役22年の判決を下している。

「何件以上なら何年という明確な基準はありませんが、起訴の件数が多ければ、それだけ量刑は重くなります。ただ、性犯罪については非親告罪になったとはいえ、被害女性は法廷で尋問を受ける場合もあるため、精神的負担から起訴をのぞまないケースもあります。その場合、検察は女性の感情に配慮し起訴しないことが多く、全容解明にはハードルがあるのが現実です。今回の事件で当局が逮捕を重ねているのは、起訴の件数を少しでも増やし重罰を与えたいという強い意志の表れだと思います」(片田弁護士)

 性犯罪に対しては近年、重罰化の傾向にあるようだ。性暴力被害などの相談にのっているNPO法人「レイプクライシスセンターTSUBOMI」の望月晶子弁護士は、

「性犯罪は、かつてはいわゆる『量刑相場』で重さが決まっていましたが、裁判員裁判によって市民感覚が反映されるようになりました。また被害者が裁判に参加しやすくなったことで、被害者の思いをより知ってもらえるようにもなりました。このことが、性犯罪の重罰化傾向の一因かもしれません」と解説し、こう続ける。

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加害者が残す「動画」などから余罪が発覚