実際に「学校のタブレット YouTube」などで検索をかけると、たくさんの裏技が紹介されています。Google Chromeの設定アイコンからYouTubeを見る方法が解説されていたり、質問投稿サイトには「どうやったら学校や親にバレずに、制限を解除できますか?」といったものがあふれています。

 子どもたちにも聞いてみました。中学生にどんな裏ワザを使っているのかを聞いてみたところ、「あるアプリから検索をかけると履歴が残らない」「『ゲーム』という言葉で検索をかけると制限がかかってしまうけれど、特定の言葉を入れるとパズドラと似たようなゲームができる」「YouTubeは見られなくても、YouTubeミュージックで音楽が聞ける」といったものから、「タブレットに時間制限がかけられている場合、そもそものタブレットの時間設定を変えてしまう」といったものまで、あらゆる情報が出てきました。

 もちろん、端末によって、あるいは学校の制限のかけ方によって、こうしたテクニックが使えない場合もあるでしょうが、「やった!見れた!」という情報は一瞬の間に友達同士で共有されていくようです。

■ルールは子どもを制限するために作るのではない

 子どもへのメディア教育を専門とする相模女子大学の七海陽准教授は「本来は、幼少期の頃から、デジタルメディアとの付き合い方をしつけていくのがベスト」としたうえで、こう話します。

「小学校高学年以上に成長した子どもたちの場合、親の言うことはなかなか素直に聞いてくれません。子どもの気持ちや好きな世界観に共感しないまま、制限を厳しくしても、お互いの距離が遠のくだけで、あまり意味をなしません」

 では、親はどうすればいいのでしょうか。

「まずは、少しでも子どもがはまっていることを親も知る、体験するなどしてみてほしいと思います。これからの子どもたちは、親世代とは違ったクリエイティブ性を必要とされる社会で生きていくわけで、それを否定することはできないはずです。そもそもゲームやYouTubeが悪いわけではありませんし、ゲームで友達とつながる子どもたちは新しい社会性を育んでいるかもしれません。ですから頭ごなしにそれらを否定するのではなく、子どもたちのコントロール力をつけることを目的としたルール作りが必要だと思います」(七海准教授)

 子どもたちが好きなもの自体は否定せず、生活に支障がない時間配分を一緒に決めて、守れたら褒める。もし子どもたちがルールを守れない日があったとしても、責めずに「それでいいの?」と声がけをしていく。

 魔法がかかったように、いきなり子どもが変わることはないでしょうが、根気よく言い続けることが、自律心を育てていくいちばんの近道のようです。小さなバトルを続けながらも、見守る姿勢が大切なのかもしれません。(鶴島よしみ)

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鶴島よしみ
スローマリッジ取材班 鶴島よしみ

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