でも、そんな朋ちゃんがようやく帰ってきた。2021年4月に『アウト×デラックス』に出演。登場するなり「カネがすべてっすよ」と言い切り、視聴者の度肝を抜いた。ぽっちゃり体型になった彼女は「1歳の子どもためにフェラーリを買った」といった桁外れの散財エピソードを披露して、貫禄を見せつけた。

 その後は、前述の通り、数々のバラエティ番組に出演した。壮絶な過去を背負いながらも、タブーなしで何でもネタにして明るく話す彼女は、良くも悪くもあの頃のままの「朋ちゃん」だった。

 8月17日には、オンライン会見にて彼女のマネジメントを手がける男性との結婚を発表した。ここで普通なら「めでたしめでたし」となるところだが、彼女の場合はそうは問屋が卸さない。

 会見では「もし旦那さんが浮気したら?」と質問されて「私の方が浮気するんじゃないかな」と結婚会見にあるまじき回答をしていたし、なぜか安室奈美恵の結婚発表のときとほぼ同じ服装をしていた。波風は立たせるもの、物議は醸すもの。そんな朋ちゃんらしい前代未聞の珍会見だった。

 勝俣州和のYouTubeチャンネルの動画では、夫に手作りのカレーを食べさせたところ、夫の全身に蕁麻疹が出たというエピソードを語っていた。料理のときにまな板と包丁を洗う習慣がなく、ずっと同じ状態のものを使い回しているのが原因かもしれないと指摘されていた。世界よ、これが華原朋美だ。

 上質なエンターテインメントはかすかな苦味を残すものだ。人生をエンタメにした日本一ほっとけない女、朋ちゃんは、危険だけど面白い。回り続けるコマのように、これからも不安定という安定を保っていてほしい。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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